神は6日で世界を造ったとの「真実」を理解する意味...理不尽な世界に対峙する「神学」の力
教授: 個人的な話ですが、私と妻がニューヨークで生活していた頃のことです。住まいを探していたとき、家賃のわりに部屋も広いアパートを見つけました。とても気に入ったので、借りることにしたんです。ただ、一つだけ、その部屋には問題がありました。私たちの前の住人が、窓を開けっ放しにしていたため、鳩が部屋のなかに入りこみ、窓の内側の台のところに巣をつくって、卵を産んだのです。
私と妻が初めてその部屋を見に行ったときは、まだ卵でした。ですが、引っ越したときには、二羽の雛が生まれていて、私たちの顔を見ると、ピヤックピヤックと鳴きました。歓迎してくれたんですね(笑)。
家主さんには、糞(ふん)が衛生上良くないから、すぐに鳩を捨てるよう言われました。でも、私たちはとてもその鳩の雛を捨てることができませんでした。とはいえ、確かに、衛生的ではないし、母鳩が雛に餌を与えるために行ったり来たりするため、窓も開けておいてあげなければなりません。そこで、私たちは頑丈な箱で鳩の家をつくることにしました。雛をそのなかに入れ、窓の外側の台に、ロープで鳩の家をしっかりと固定しました。落ちないようにして、濡れないように雨よけもつくってあげたのです。
ところで、私たちがつくったその箱に、鳩の雛を移すとき、雛が全然鳴きませんでした。なぜ鳴かないのか不思議で、周りを見回してみると、母鳩が向かい側のアパートからじっと見守っていることがわかりました。母鳩がそばにいるから、雛たちは怖がらなかったのです。
鳩は小さな生き物です。ニワトリは、三歩歩くともう忘れている、なんて言われます。鳩の記憶力もニワトリとあまり変わらないそうです。けれども、そんな鳩でも、毎朝、餌を集めに出て行き、午後の同じ時間には必ず雛のところに戻ってくるのです。自分の子どもがかわいくて、かわいくて、自分が一生懸命取ってきた餌を、一粒残らず子どもに与えてやるの
です。
ある時、台風が来ました。私たちは心配になって、部屋から鳩の箱を覗いて見ました。すると、母鳩が羽をいっぱいに広げて、懸命に、雛を風から守っている様子が見えました。私はそのとき、神様がつくられた自然の摂理は本当に神秘的だと、改めて感じました。
箱のなかの雛は、一日中静かにしているのに、母親が帰ってくると喜びに満ちた声で力いっぱい鳴きます。鳩のお母さんの存在自体が、鳩の赤ちゃんにとっては、この喜び以上の喜びがないほどの喜びなのです。
それを見た私は、目には見えないけれど、この世界は、愛に満ちている。そんな「真実」に目が覚めたような気がしました。