神は6日で世界を造ったとの「真実」を理解する意味...理不尽な世界に対峙する「神学」の力

2021年9月2日(木)12時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


創世記2章

1)天地万物は完成された。
2)第七の日に、神は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。
3)この日に神はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を神は祝福し、聖別された。

教授: 皆さん、2章3節までを読んでどういう感じがしましたか?(略)

カールセン: ぼくは無神論者だから、やっぱり荒唐無稽な話に聞こえちゃうな。いまの科学的な世界観では、神話にしか見えないというか。六日で世界をつくって、七日目に休んだなんてあり得ないよ。

■世界を見る――事実(fact)と真実(truth)を区別する

教授: カールセンさんのような意見もありますね。聖書は数え切れない多数の著者たちによる信仰告白の書である。そのことをまず理解してもらいたいと思います。どういうことか。聖書は著者たちが自分のいちばん深いところにある真実を語っている本だということです。

聖書は単なる大昔のおとぎ話ではありません。「事実(fact)」と「真実(truth)」は区別されるべきであるということをまずは理解してもらいたいのです。聖書の記述は、すべてそのまま「事実」として受け取るべきものではないけれど、聖書は「真実」について語っているのです。

鈴木: 「事実」と「真実」ってどう違うの? 「事実」と「真実」......。私はあんまり、使い分けてないかなぁ。

教授: 「事実」と「真実」の違いを認識することは、聖書を読むうえで大切です。そうですね......。私が思う「事実」は、科学的に証明できる客観的な事柄です。「How(どのように)」という問いへの答えを与えてくれるものです。「真実」は、価値や意味についての答えです。つまり「Why(なぜ)」という問いへの答えを与えてくれるものです。

楊: ちょっとわかりにくいので具体例で説明していただけますか?

教授: そうですね。たとえば美しい秋の空が目の前に広がっているとしましょう。詩人がその美しさを「深く静まり穏やかに眠る湖」と表現したとします。その表現は決して偽りではない。秋の空の深く青く澄み渡っている様子そのものが「事実」だとしたら、それは科学的に証明できる事柄です。それに対して「真実」とは、秋の空を見たときにその人の心に感動が広がった、あるいは、その美しさに心を打たれたことなどを表す表現です。「真実」とはそのできごとが何らかの意義や価値、あるいは深さを有し、受け取る側に感銘や影響を与える。そういった事柄だと思います。この世にはそういったもの、あるいは次元があるのではないでしょうか。「事実」から独立した、そうした「真実」の世界がありませんか? 

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ、米関税で最大80億ドルの損失も=政府高官

ビジネス

午前の東京株式市場は小幅続伸、トランプ関税警戒し不

ワールド

ウィスコンシン州判事選、リベラル派が勝利 トランプ

ワールド

プーチン大統領と中国外相が会談、王氏「中ロ関係は拡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中