最新記事

アフガニスタン

まるで敗戦直後の日本軍を奪い合う中共軍──米大使館存続望むタリバン

2021年8月29日(日)12時37分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そこで、同じイスラム圏であるトルコにカブール空港の管理を引き継いでくれないかと頼んでいるのだが、エルドアン大統領は8月28日の時点で、まだ最終決断をしていない。これに関しても非常に多くの報道があり、たとえば8月26日の時点ではロイターの<タリバン、カブール空港の運営支援をトルコに要請=政府関係者>が、最も新しい情報としては8月28日の<タリバン、混乱続くカブール空港の運営をトルコに要請>などがある。

要は、タリバンは「トルコ軍は撤退させて、空港の管理運営だけをトルコに依頼したい」のに対して、トルコは「トルコ軍なしで労働者の安全を確保するのはリスクを伴うので、トルコ軍の完全撤退を要求するのならば、技術的支援に同意しかねる」という姿勢である。

特に26日には170人以上が犠牲になる爆破テロ事件が起きているので、安全の担保が前提条件であるとして、なおさら慎重な姿勢を見せている。そこで、妥協点が見つからない場合は、タリバンはカタールにも空港管理を依頼しているようだ。

タリバンは山岳地帯での戦いには長けているが、航空機を持っていなかった。但しこのたびの米軍撤退に伴う政府軍との戦いで、タリバンはアフガン政府軍が管轄していたシーンダハル空軍基地やカンダハル空軍基地などを墜としたので、航空機だけは獲得したが、操縦する技術を持っていない。ましてや空港管理となると一層困難で、どこかの国に頼まなければならないのである。

中共軍による敗戦直後の日本軍の取り合いを彷彿とさせる

2015年7月27日のコラム<中国の空軍を創ったのは元日本軍――軍事演習「跨越-朱日和2015」>に書いたように、1945年8月14日、日本がポツダム宣言を受諾したという情報が伝わると、中共軍を率いる毛沢東は、ただちに大陸の各地にいる日本軍陣営に向けて進軍させた。

8月15日に日本が無条件降伏を受け容れると、天皇陛下の玉音放送が始まる前に、国民党軍を率いる「中華民国」重慶政府の主席・蒋介石は勝利宣言を発表して、同時に「日本軍は中華民国重慶政府に降伏しなければならず、武装解除は重慶政府が行う。日本軍はそれまで待機し、武器を中共軍に渡してはならない」と指示した。

日本が戦っていたのは「中華民国」なので、当時は首都を重慶に遷していた「中華民国」に対して武器を渡さなければならなかったのである。

ところが日本敗戦後に待ち構えている国共内戦のための布陣を早くから準備していた中共軍は、河北省や山東省をはじめ、ソ連軍が掌握した(元満州国であった)東北三省へと突き進み、日本軍に武装解除を要求し、少なからぬ武器と捕虜を獲得している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中