アフガニスタン情勢、アメリカが築いた土壌の上に中国が平和をもたらす
China Will Do Better Than U.S.
タリバン幹部のバラダル師(左)は天津を訪問して中国の王毅外相と会談した(7月28日) LI RANーXINHUAーREUTERS
<タリバンとの関係構築にいち早く動いた中国だが、控えめな介入は意外な平和をもたらすかもしれない>
米軍はアフガニスタンからほぼ撤退し、首都カブールはイスラム主義組織タリバンに制圧された。それでも、中国がアフガニスタンに軍を送る気配はない。
むしろ中国は、タリバンに対してはもちろんのこと、全ての当事者に物やカネを与えようとしている。これから中国が取ろうとしている道は、アメリカが示した国力と軍事力によるアフガニスタン再建計画よりもうまく、そして安上がりになりそうだ。
これまで中国がアフガニスタンに抱いてきた懸念は、地域の不安定化を引き起こすこと、そしてアフガニスタンが中国・新疆ウイグル自治区の反政府勢力への援助基地となったり、中国の抑圧を逃れようとするウイグル人の避難先になることだった。
しかしタリバンは過去20年間の経験から、テロ集団、特に大国(欧米諸国や中国、ロシア、あるいはインドまでも)を標的にしかねないアルカイダのような国際テロ組織に避難所を提供しないことを学んだようだ。既にウイグル人の武装勢力とは距離を置き、逆に中国政府に接近している。
中国はアフガニスタンの政治や統治には関心がない。アメリカとNATOがアフガニスタンで進めようとした人権の確立や国家建設の取り組みにも、関心がない。
その一方で中国は、自国と欧州を結んで築こうとしている広域経済圏「一帯一路」のレンズを通じてアフガニスタンを見ている。既に中国はアフガニスタンの北にある中央アジア諸国を通る広範な交通インフラを構築しており、パキスタンを縦断するルートも建設中だ。
この2つのルートの間で、アフガニスタンは非常に微妙な位置にある。アフガニスタン国境地帯の不安定な情勢は、この2つのルートに影響を与える恐れがあった。
アメリカが払ったコストで中国が得をする
中国が望むのは、紛争が国境を越えて波及しないことだ。アメリカがもたらしたアフガニスタンの安定は、中国が拡張主義を推し進める下地を用意した。米政府はそのために莫大な財政的・人的コストを被ったことになる。
一帯一路構想のルートは、必ずしもアフガニスタンを通る必要はない。中国からアフガニスタンに対する投資は短期的なものになり、情勢がさらに不安定になれば容易に撤退できるような形になる可能性が高い。
今まで中国は、アフガニスタンの前政権と良好な関係を築いていた。この先アフガニスタンにどのような政府が生まれようと、これまでと同じく現実的な関係を築こうとするだろう。