アフガニスタン情勢、アメリカが築いた土壌の上に中国が平和をもたらす
China Will Do Better Than U.S.
中国は現在、カブール近郊の銅山と北部の油田に投資している。カブール大学には、中国文化の普及を目指す孔子学院もある。こうした従来の動きが今後どうなるかは不透明だが、タリバンは中国の投資を歓迎して国を再建する意向を表明している。
タリバンの勝利は、この地域の意外な平和につながるかもしれない。もしかすると、タリバンの支配下で暮らすしかない人々の多くにとっても快適な日常をもたらす可能性がある。
アフガニスタンの新たな支配者はこれまでパキスタンと密接な関係にあり、最近は中国と緊密な同盟国として絆を強めている。20年にわたるアメリカによる介入の結果として、かつては敵対していたイランとも関係を深めた。
アフガニスタンにおける紛争の勝利者と中国との間だけでなく、この地域の中国の盟友であるパキスタンやイランとの間でも利害は一致しつつあり、これは異例の事態だといえる。しかし状況は不安定で、急速に変化している。タリバンは独立心が強く、何よりけんか早い組織だ。
パキスタンの軍情報統合局が思わぬ動きに出る可能性もある。自国のタリバン系組織「パキスタン・タリバン運動」が今回の事態に触発されるのを、黙って見ているはずがない。この地域にはほかにも、国家間の協力を台無しにしかねない小規模なイスラム系組織が数多くある。
中国独自の外交的アプローチも大きなリスク要因だ。中国政府が、浅薄にも主要な当事者に対して攻撃的な、いわゆる「戦狼外交」を試みれば、アフガニスタン情勢は再び混乱に陥りかねない。
関与はベールに覆われる
いま中国の指導部が最も恐れているのは、アメリカや旧ソ連のようにアフガニスタンの泥沼にはまること。あるいは事態が思わぬ方向に進んで、イスラム主義者の反感を買うことだ。
そのため中国は、アフガニスタンへの関与をできる限り目立たない形で行っている。アフガニスタンに対する目に見える取り組みは、全てベールで覆われたものになる。投資や安全保障面の管理も民間企業が担い、融資や補償も直接的には行わないだろう。
こうした手法は、中国が過去20年間に培ってきた投資外交戦略から大きく外れるものになる。従来の戦略は大部分が大々的に公表され、国内外へのプロパガンダの役割も果たしてきた。
だが「アフガニスタンがテロ組織の温床にならないようにする」という9.11同時多発テロ後のアメリカの目的を考えれば、アフガニスタンにおける中国の取り組みが成功しようとしまいと、必ずしも悪い結果にはならない。