ニュース速報
ビジネス

IMF・世銀会合、「関税」一色に 二国間交渉が焦点

2025年04月21日(月)19時41分

4月21日、今週ワシントンで開かれる国際通貨基金(IMF)・世界銀行の春季会合は米国の関税政策への対応が最大の焦点となる見通しだ。 写真は世銀のロゴ。インドネシア・ヌサドゥアで2018年10月撮影(2025年 ロイター/Johannes P. Christo)

By David Lawder, Andrea Shalal

[ワシントン 21日 ロイター] - 今週ワシントンで開かれる国際通貨基金(IMF)・世界銀行の春季会合は米国の関税政策への対応が最大の焦点となる見通しだ。    

ここ数年は気候変動、インフレ、ウクライナ支援といった課題が主な議題となってきたが、今年1月に就任したトランプ米大統領は輸入品への高関税措置を相次いで発表。各国の財務相らは、関税の影響緩和や二国間の貿易交渉に向け、米国側との協議を模索するとみられる。

米シンクタンク、アトランティック・カウンシル地理経済学センターのシニアディレクター、ジョシュ・リプスキー氏は「今週は貿易戦争一色になる。ほぼ全ての国が何らかの形で進めようとしている二国間交渉が今週の焦点だ」と述べた。    

<世界経済見通し、大幅な下方修正に>

IMFのゲオルギエワ専務理事は先週、22日公表する「世界経済見通し」について、経済成長予測が大幅に下方修正されると述べた。貿易政策を巡る不透明感が「桁違い」のレベルに達しており、金融市場のボラティリティーが極端に高まっていることが背景だ。ただ、世界的な景気後退は予想しなかった。

リプスキー氏は、トランプ氏の関税を受けて米国債が売られており、ドルが今後も安全資産とみなされるかが新たな課題になる可能性があると指摘した。

これまでIMF・世銀会合は、新型コロナウイルス流行や2008年の金融危機など、世界的な危機に対応する政策協調の場として機能してきた。だが、政策の専門家によると、今回の会合では、各国が自国経済の安定を最優先するとみられる。

米財務省の元高官で、米シンクタンク「グローバル発展センター」のシニア政策フェローを務めるナンシー・リー氏は「過去数年は多国間開発銀行の改革や途上国の債務問題が議論の中心だったが、今回はそれが後回しになる」と述べた。

<注目されるベッセント長官の動向>    

こうした中で、特に注目されるのがベッセント米財務長官の動向だ。

加藤勝信財務相は18日、為替に関してベッセント長官と緊密に協議する考えを改めて表明。韓国の崔相穆企画財政相と安徳根産業通商資源相も、今回の春季会合に合わせ、グリア米通商代表部(USTR)代表やベッセント長官と会談する予定だ。

一方、IMF・世銀に対するトランプ政権の姿勢に疑問を呈する出席者も少なくない。米国の保守強硬派がまとめた政策提言「プロジェクト2025」にはIMF・世銀からの脱退が盛り込まれている。

リー氏は「ベッセント長官には今回の会合で非常に重要な役割がある。米国はそもそも多国間開発銀行への支援を国益と見なしているのかという問題だ」と述べた。

世界銀行のバンガ総裁は先週、トランプ政権と建設的な協議を行ったと述べたが、バイデン前政権が昨年約束した世界の最貧国向け基金への40億ドルの拠出金をトランプ政権が実施するか分からないとした。

バンガ総裁は今週、世銀のエネルギー融資方針を再生可能エネルギー主体から原子力やガスプロジェクトを含む方向へ転換することや、気候変動適応プロジェクトへの重点シフトについて発表する見込みだ。これはトランプ氏の優先事項により沿った組み合わせとなる。

ベッセント長官は、IMFの200億ドルの新たなアルゼンチン向け融資プログラムを支持した。先週のアルゼンチン訪問で同国の経済改革への支持を示し、米国は中国との「略奪的な」二国間融資取引に代わる選択肢をさらに望んでいると述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

バフェット氏、トランプ関税批判 日本の5大商社株「

ビジネス

バフェット氏、バークシャーCEOを年末に退任 後任

ビジネス

アングル:バフェット後も文化維持できるか、バークシ

ビジネス

OPECプラス、6月日量41.1万バレル増産で合意
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中