タリバンの本質は20年前のまま、国際社会に受け入れられる努力は実るか
The Two Talibans
カタールでアフガン政府との停戦協議に臨むアブドゥル・サラム・ハナフィー(右端)らタリバン代表団(8月12日) HUSSEIN SAYEDーREUTERS
<米軍撤退に乗じて全土を掌握したタリバンだが、柔軟姿勢の指導部と凶暴な戦闘員はどっちが本物?>
略奪や処刑を伝える話が国中から聞こえてくる。首都カブール在住の市民は海外にいる友人知人に電子メールを送り、タリバンの戦闘員が住宅に押し入って女性のジャーナリストや医師を連行する様子を伝えている。
だが電光石火でアフガニスタン全土を制圧して以来、タリバン指導部はまさに真逆のメッセージを世界に発信している。現場の戦闘員には乱暴を慎めと命じ、国民に向けては自分たちの「善意」を信じろと呼び掛けている。
前政権で働いていた人全員に恩赦を与えるとも言った。女性を含めて公務員やジャーナリストには職場復帰を促した。少数民族(や異教徒)にも手を差し伸べ、彼らの不安を和らげようとしている。
タリバン幹部の多くは外国生活が長く、自分たちは昔と違う穏健派だというイメージを打ち出し、正当な指導者として国民からも国際社会からも認められることを強く望んでいる。
しかし現場の戦闘員が同じ思いだという保証はない。組織内に生じた亀裂がどう修復されるのか、そして最終的に勝つのはどちらか。今はまだ分からない。
カブールを制圧した翌日、タリバンの広報官ザビフラ・ムジャヒドは市内で長時間の会見を行い、タリバンは報復を求めておらず、過去に敵対した者を処刑することもないと言明した。女性の権利もイスラム法(シャリーア)の枠内で守り、融和的な政府を樹立し、外国大使館は24時間体制で保護するとも約束した。
戦闘員は「選挙など許さない」
だが国民の多くやタリバンをよく知る専門家は、口先だけのポーズと見なしている。現にムジャヒドはメディアにイスラム法の遵守を求めているし、女性の職種を限定するような発言もした。
そもそも政治指導部が、現場の戦闘員に望まれぬ譲歩をするとは考えにくい。既に戦闘員がデモ参加者に発砲したとか、街頭に貼り出された女性の広告を塗りつぶしているなどの報告がある。
南部の主要都市カンダハルにいるタリバン戦闘員の一人は匿名を条件に筆者の取材に応じ、タリバンは選挙などは許さないと言った。
「選挙は無駄だ。この20年に何度も選挙があったが、何もできていない。われらはわが道を行くのみだ」
ただしカタールの首都ドーハにいるタリバンの公式報道官スハイル・シャヒーンの見解は異なる。選挙の実施を含め、「協議の場に持ち出されるどんな提案も排除しない」と主張している。