最新記事

タリバン

タリバンの本質は20年前のまま、国際社会に受け入れられる努力は実るか

The Two Talibans

2021年8月25日(水)12時46分
アンチャル・ボーラ(ジャーナリスト、在レバノン)

かつてCIAで南・南西アジア地域担当のテロ対策班を率いていたダグラス・ロンドンに言わせると、今のタリバンは「実にメディア対応がうまい」。だから昔のように、見せしめで少数民族を虐殺したりすることはないかもしれない。しかし、だからといって基本的人権の無視やテロ集団への支援をやめるとも思えないという。

「彼らは宗教的な正統性を身にまとって、以前と同じように女性を虐げ、欧米文化の流入を阻み、民主主義を抑圧し人権を無視するだろう」とロンドンは言う。「テロ集団を抑えることもせず、ただ派手な活動は控えてくれと言うのが関の山だろう」

ちなみに、インドなどで活動していて身柄を拘束され、アフガニスタン当局によってバグラム空軍基地内の収容所に入れられていたアルカイダの戦闘員を、タリバンは既に何人も解放している。

組織の上層部から現場レベルまで、タリバン内部のさまざまな人物と重ねてきた取材を総合すると、彼らが再び強権的な支配体制の構築を目指しているのは間違いない。ただし、以前ほど極端かつ残虐ではない可能性がある。

今度のタリバンが目指すのは、現にイランやサウジアラビアのようなイスラム国家で行われている統治形態のもっと厳格なバージョンだろうという見方もある。そうであれば、タリバンが初めてアフガニスタンの支配権を握った20年前よりは穏健な体制になるだろう。

イランの例に倣うなら、今後のアフガニスタンは露骨な宗教国家ではあるが、指示系統の明確な聖職者集団が動かす体制となり、原理主義者の暴走は防げるかもしれない。

都市部の生活は西洋化している

「聖職者の仕切るイスラム国家。それこそがイランの期待するところだ」。アフガニスタンの元国家保安局長官で、2019年の大統領選に出馬したラハマトゥラ・ナビルは筆者にそう言った。首都陥落の直前のことだ。

いまカタールの首都ドーハやパキスタン西部のクエッタ、あるいはアフガニスタンの首都カブールにいるタリバン幹部は、まず都市部の住民にどこまで自由を与えるかを議論している。この20年で都市部の人口は増え、それなりに西洋化している。

彼らを懐柔して外国からの批判を封じつつ、地方部に多い宗教的保守派の支持もつなぎ留める。それが彼らの狙いだ。

筆者はタリバン幹部サイード・アクバル・アガの息子ハビブ・アガに話を聞いた。彼は首都に進攻した実戦部隊とも、海外にいる指導部とも通じているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念

ビジネス

米国株式市場=続伸、堅調な経済指標受け ギャップが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米景気好調で ビットコイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中