タリバンの本質は20年前のまま、国際社会に受け入れられる努力は実るか
The Two Talibans
かつてCIAで南・南西アジア地域担当のテロ対策班を率いていたダグラス・ロンドンに言わせると、今のタリバンは「実にメディア対応がうまい」。だから昔のように、見せしめで少数民族を虐殺したりすることはないかもしれない。しかし、だからといって基本的人権の無視やテロ集団への支援をやめるとも思えないという。
「彼らは宗教的な正統性を身にまとって、以前と同じように女性を虐げ、欧米文化の流入を阻み、民主主義を抑圧し人権を無視するだろう」とロンドンは言う。「テロ集団を抑えることもせず、ただ派手な活動は控えてくれと言うのが関の山だろう」
ちなみに、インドなどで活動していて身柄を拘束され、アフガニスタン当局によってバグラム空軍基地内の収容所に入れられていたアルカイダの戦闘員を、タリバンは既に何人も解放している。
組織の上層部から現場レベルまで、タリバン内部のさまざまな人物と重ねてきた取材を総合すると、彼らが再び強権的な支配体制の構築を目指しているのは間違いない。ただし、以前ほど極端かつ残虐ではない可能性がある。
今度のタリバンが目指すのは、現にイランやサウジアラビアのようなイスラム国家で行われている統治形態のもっと厳格なバージョンだろうという見方もある。そうであれば、タリバンが初めてアフガニスタンの支配権を握った20年前よりは穏健な体制になるだろう。
イランの例に倣うなら、今後のアフガニスタンは露骨な宗教国家ではあるが、指示系統の明確な聖職者集団が動かす体制となり、原理主義者の暴走は防げるかもしれない。
都市部の生活は西洋化している
「聖職者の仕切るイスラム国家。それこそがイランの期待するところだ」。アフガニスタンの元国家保安局長官で、2019年の大統領選に出馬したラハマトゥラ・ナビルは筆者にそう言った。首都陥落の直前のことだ。
いまカタールの首都ドーハやパキスタン西部のクエッタ、あるいはアフガニスタンの首都カブールにいるタリバン幹部は、まず都市部の住民にどこまで自由を与えるかを議論している。この20年で都市部の人口は増え、それなりに西洋化している。
彼らを懐柔して外国からの批判を封じつつ、地方部に多い宗教的保守派の支持もつなぎ留める。それが彼らの狙いだ。
筆者はタリバン幹部サイード・アクバル・アガの息子ハビブ・アガに話を聞いた。彼は首都に進攻した実戦部隊とも、海外にいる指導部とも通じているという。