異例づくめの東京五輪が閉幕へ メダル最多の日本、「バブル」外で感染急増
政治的な問題も大会期間中に浮上した。ベラルーシ陸上女子のクリスチナ・チマノウスカヤが、コーチらに強制帰国させられそうになる事件が発生。チマノウスカヤはコーチらをソーシャルメディア上で批判した後に東京の羽田空港に連れて行かれたと主張し、亡命を求めた。ポーランドが彼女に人道的査証を発行した。
ベラルーシはルカシェンコ大統領が1994年から同国を厳しく支配。昨年夏の選挙で勝利後、不正があったとする市民が大規模な抗議デモを行ったが、これを暴力で弾圧した。選手が政府からの支援に依存する国としては珍しく、ベラルーシではアスリートも抗議に参加、複数が投獄されたり、代表チームから外されている。
選手は楽しめているか
女子体操の米国代表シモーン・バイルスが欠場したことにも、世界の目が注がれた。リオ五輪4冠のバイルスは、全米の期待を背負って来日したが、精神的な理由で団体総合決勝を途中棄権した。「あまり楽しめていない気がする」──。
米体操連盟やIOCは彼女の決断を支持。バイルスはその後調整を重ね、最終種目の個人平均台で復帰し銅メダルを獲得した。
「メンタルヘルスの問題に光を当てることは私にとって大きな意味がある。結局のところ私たちは人間であって、単に人を楽しませるモノではないということを人々は理解すべきだ」とバイルスは訴えた。
今大会では猛暑も問題となった。試合中に体調を崩す選手が続出。テニス男子シングルスに出場したダニル・メドベージェフ(ロシア・オリンピック委員会=ROC)は試合中、「死んだら誰が責任を取るんだ」と審判に訴えた。
アスリートに最高のパフォーマンスを披露してもらうための場をいかに提供するか、公平な多様性をどう図るのか。政治の介入を防げるか、そしてコロナをどう克服するか、様々な課題が24年のパリ大会に引き継がれる。
(久保信博 編集:伊賀大記)
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