最新記事

新型コロナウイルス

7000人もの医療関係者を五輪に確保し、「国民の重症者以外は自宅療養」の無責任

2021年8月5日(木)13時28分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

どこまでが中等症で、どこまでが重症かに関して、少なくとも東京都は「人工呼吸管理またはECMO を使用している患者」を重症患者とみなすと定義している

7000人の医療従事者を東京五輪に確保

毎日新聞は今年7月23日付の記事<東京2020+1 医療従事者7000人>で「東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は22日、大会に携わる医師や看護師などの医療従事者が約7000人になると明らかにした。当初計画では約1万人が必要だとしていたが、新型コロナウイルスの影響で逼迫(ひっぱく)する医療現場への配慮などから約3割削減した。選手向けの医療を中心に従事する」と報じている。

7月31日付の時事通信社は<「すでに医療崩壊」 治療、ワクチン、五輪派遣も―感染拡大で医療従事者悲痛>と報じている。

日本国民の中にコロナ患者が出ても入院できないどころか診断してもらう医師さえ見つからない現状の中で、東京五輪のためなら、日本のこの少ない医療資源の中から優先的に五輪医療従事者チームを7000人も確保するというのは、どういうことなのか?

政府への批判をかわし選挙を有利にするために東京五輪を強行した

7月31日、自民党の河村建夫議員(元官房長官)が「五輪がなかったら、国民の皆さんの不満はどんどんわれわれ政権が相手となる。厳しい選挙を戦わないといけなくなる」と語ったと共同通信が伝えている。

つまりマスコミを総動員して、国民に日本選手の活躍に熱狂させてコロナ患者のことを忘れさせ、内閣支持率を上げようという魂胆であることを、二階幹事長の側近である河村議員は正直に言ってしまったのだ。
 

日本は患者数が増えるのが嫌だからPCR検査を進めていない

現在、東京のPCR検査の陽性者率は20%を超えている。PCR検査数が少ないからだろう。

昨年7月、東京保険医協会のサイトに、NPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が<日本ではPCR検査がなぜ進まないのか>という論考を載せておられる。そこでは「日本がPCR検査を絞ってきて、患者発見数を少なくさせている経緯」が詳細に観察されている。

また昨年4月には、さいたま市の西田道弘保健所長が記者団の取材に「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と明らかにしたと日経新聞が報道している。

日本も「方艙病院」の設営を

このたびの菅首相の「中等症までは自宅療養を」という指針は、「入院患者が増えると病床使用率が高くなり、医療の逼迫度が数値として高くなるので、入院患者を減らして緊急事態宣言を取り消そうという姑息な魂胆だ」とも言える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然

ビジネス

米連邦地裁、マスク氏の棄却請求退ける ツイッター株
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 10
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中