最新記事

新型コロナウイルス

7000人もの医療関係者を五輪に確保し、「国民の重症者以外は自宅療養」の無責任

2021年8月5日(木)13時28分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国では無症状感染者でさえ医療機関に入れて隔離観察を行っているというのに、いよいよ酸素マスクや人工呼吸器を付けなければならないほど重症化するまで(東京都ではECMOを使う寸前まで)「放置する」政策を日本は取っているのだ。

菅政権は尾身会長の「五輪開催を懸念する発言」を「越権」と位置付けて退け、何が何でも五輪開催へと突撃していった。

五輪を開催する国家としての圧倒的なコロナ対策をした上での強行ならば、「国民の命を第一に考えている」という「絵空事」も多少の信憑性を帯びてくるだろうが、医療資源もエネルギーも心までも、すべて選挙のために五輪に捧げているのだから、国民は納得しようもないのではないか。

ひとたび失った命は二度と戻ってはこない。しかし優秀な日本選手ならば、もし来年まで五輪開催を延期していたとしても、きっと輝かしい活躍をしてくれたに違いない。

あの第二次世界大戦へと突入した時の考え方と日本政府は何も変わっていない。

せめて今からでも「方艙病院」の設営を考えてはどうなのだろうか。

本来ならば選手村などを建設するゆとりがあるのならば、そこを「方艙病院」に置き換えるべきだっただろう。そうすれば、どれだけ失わなくていい日本国民の命を救えたかしれない。

そのような英断ができる政権こそが未来永劫に人類史上で輝き続けただろう。

日本は又とないチャンスを失った。

全世界のコロナ患者は2億人を超えた。

多くの犠牲者を出した「終戦の日」が又やってくる。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

20250128issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月28日号(1月21日発売)は「トランプの頭の中」特集。いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済、政策次第で上下にリスク 軌道修正の可能性も

ワールド

米政府効率化省、大統領令で設置 マスク氏主導で「ム

ビジネス

日経平均は続伸、米トランプ関税巡り一時乱高下 

ビジネス

午後3時のドルは155円前半へ下落、トランプ氏発言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 7
    メーガン妃とヘンリー王子の「山火事見物」に大ブー…
  • 8
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中