クラブ支配を盤石にしたUEFAだが、このままではいずれ破綻する運命だ
UEFA NEEDS REFORM
このUEFAのどちらの顔を前にしても、最も割を食っているのはファンとクラブだ。どちらも、名目上は自分たちのために運営されている組織に対して発言権を持っていない。かといってUEFAを信頼できないと分かったとしても、他の組織を選び取ることはできない。
ファンやクラブより、自らの利益を優先するUEFAの体質がよく表れたのは2015年のスキャンダルだ。UEFAとFIFA(国際サッカー連盟)の幹部が絡む大規模な汚職が明らかになり、それぞれの会長に長期の活動停止処分が下った。
欧州サッカーが抱える別の大きな問題は、多くの国内リーグが「寡占」状態に陥っていること。フランス、イタリア、ドイツの1部リーグでは過去10年間、資金の豊富な特定のチームがほぼ毎年のように優勝している。イタリアではユベントスが10年で9回、ドイツでもバイエルンが9回、フランスではパリ・サンジェルマンが7回の優勝を果たした。
スペインでは、バルセロナとレアル・マドリードの2強状態が長く続いている。欧州規模の大会でも事情は同じ。05年以降、CLの決勝に進出しているのは、欧州5大リーグ(イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス)のクラブに限られている。
悪化するばかりの過密日程
このように結果が容易に予測できる試合には意味がない。選手もファンも監督も、そういう試合が多過ぎると感じている。
しかしUEFAにとっては、収益を上げる全てのチャンスに価値がある。過密日程の問題は、コロナ禍による試合延期などが増えたことで、さらに悪化している。
過密な日程は選手に深刻な影響を及ぼしかねない。先頃行われた欧州選手権では、デンマーク代表のクリスティアン・エリクセンが試合中に心不全で倒れた。通常のシーズンならエリクセンの出場試合数は約50だが、このフィンランド戦は彼にとって過去1年間で66試合目だった。
欧州選手権の開幕前には、イングランドの強豪マンチェスター・シティーのジョゼップ・グアルディオラ監督が過密日程を批判。「UEFAとFIFAは選手たちを殺そうとしている」と不満をあらわにした。
UEFAは改革の目玉として、クラブに赤字経営を禁じるファイナンシャル・フェアプレー(FFP)規則を導入した。クラブが金の力で強い選手を集めて債務を抱え、財政破綻するのを防ぐことが目的だ。