クラブ支配を盤石にしたUEFAだが、このままではいずれ破綻する運命だ
UEFA NEEDS REFORM
昨季のチャンピオンズリーグを制したイングランドのチェルシー。優勝はいつも欧州5大リーグのクラブだ MICHAEL STEELE-REUTERS
<欧州スーパーリーグを潰すことに成功した金満組織UEFAだが、自身の利益よりファンとクラブのために真剣に議論すべき時が来た>
欧州最強の文化的輸出品は何か。それはワインでもチーズでもない。世界で最も愛されるスポーツであるサッカーだ。
欧州のクラブチーム王者の座を争うチャンピオンズリーグ(CL)の決勝は、世界で約4億人がテレビ観戦する。アメリカンフットボール、NFLの優勝決定戦であるスーパーボウルの実に4倍だ。
ところが、これほどグローバルな成功を収めているのに、欧州サッカーは欧州経済と同様の問題に直面している。融通の利かない規制によって、企業と消費者の利益が損なわれている──サッカーの場合は、クラブとファンの利益だ。
それを象徴する出来事が、今年4月にあった。欧州各国で人気の高い12クラブが「欧州スーパーリーグ」の創設を発表したときのことだ。
CLに実質的に取って代わる大会という位置付けだけに、UEFA(欧州サッカー連盟)はこれを阻止する動きに出た。これに対してスペインの裁判所は4月に続いて7月1日にも、スーパーリーグ創設を邪魔しようとするUEFAの試みを認めないという判断を示している。
わずか48時間で頓挫した構想
しかしスーパーリーグ構想は発表直後に、欧州各国のサポーターや政界からの猛反発で頓挫していた。なかでも問題となったのが、創設に関わった12クラブを含む15クラブは、永続的に入れ替わることなく大会に参加できるという方針だった。
発表から最初のクラブが離脱を表明するまで、わずか48時間。この間にUEFAは、欧州サッカーの「守護者」であることを見せつけた。
確かにスーパーリーグ構想は穴だらけだった。だが各方面から一斉に反対されたからといって、重要な議論の場までつぶすべきではない。欧州サッカーには課題が山積している。特にUEFAについては、全面改革への真剣な議論が必要だ。
UEFAは度を越した金満組織だ。この10 年間、着実に収入を増やしている。とりわけ今シーズンは、コロナ禍のために1年遅れで開催された欧州選手権の売り上げを含めて、59億ドル近い収益が見込まれる。
だが金儲け以外の点で、UEFAが欧州サッカーを統括する手法はあまりにお粗末。その理由は、UEFAが2つの顔を持っていることだ。
UEFAの表向きの使命は、欧州サッカーの利益を守ること。だが一方で、この組織は世界でも指折りのイベントプロモーターだ。世界有数の人気スポーツイベントから収入を得て、自らの判断で分配できる。