最新記事

スポーツ

クラブ支配を盤石にしたUEFAだが、このままではいずれ破綻する運命だ

UEFA NEEDS REFORM

2021年7月30日(金)17時39分
ニコラス・クムレベン
チャンピオンズリーグを制したチェルシー

昨季のチャンピオンズリーグを制したイングランドのチェルシー。優勝はいつも欧州5大リーグのクラブだ MICHAEL STEELE-REUTERS

<欧州スーパーリーグを潰すことに成功した金満組織UEFAだが、自身の利益よりファンとクラブのために真剣に議論すべき時が来た>

欧州最強の文化的輸出品は何か。それはワインでもチーズでもない。世界で最も愛されるスポーツであるサッカーだ。

欧州のクラブチーム王者の座を争うチャンピオンズリーグ(CL)の決勝は、世界で約4億人がテレビ観戦する。アメリカンフットボール、NFLの優勝決定戦であるスーパーボウルの実に4倍だ。

ところが、これほどグローバルな成功を収めているのに、欧州サッカーは欧州経済と同様の問題に直面している。融通の利かない規制によって、企業と消費者の利益が損なわれている──サッカーの場合は、クラブとファンの利益だ。

それを象徴する出来事が、今年4月にあった。欧州各国で人気の高い12クラブが「欧州スーパーリーグ」の創設を発表したときのことだ。

CLに実質的に取って代わる大会という位置付けだけに、UEFA(欧州サッカー連盟)はこれを阻止する動きに出た。これに対してスペインの裁判所は4月に続いて7月1日にも、スーパーリーグ創設を邪魔しようとするUEFAの試みを認めないという判断を示している。

わずか48時間で頓挫した構想

しかしスーパーリーグ構想は発表直後に、欧州各国のサポーターや政界からの猛反発で頓挫していた。なかでも問題となったのが、創設に関わった12クラブを含む15クラブは、永続的に入れ替わることなく大会に参加できるという方針だった。

発表から最初のクラブが離脱を表明するまで、わずか48時間。この間にUEFAは、欧州サッカーの「守護者」であることを見せつけた。

確かにスーパーリーグ構想は穴だらけだった。だが各方面から一斉に反対されたからといって、重要な議論の場までつぶすべきではない。欧州サッカーには課題が山積している。特にUEFAについては、全面改革への真剣な議論が必要だ。

UEFAは度を越した金満組織だ。この10 年間、着実に収入を増やしている。とりわけ今シーズンは、コロナ禍のために1年遅れで開催された欧州選手権の売り上げを含めて、59億ドル近い収益が見込まれる。

だが金儲け以外の点で、UEFAが欧州サッカーを統括する手法はあまりにお粗末。その理由は、UEFAが2つの顔を持っていることだ。

UEFAの表向きの使命は、欧州サッカーの利益を守ること。だが一方で、この組織は世界でも指折りのイベントプロモーターだ。世界有数の人気スポーツイベントから収入を得て、自らの判断で分配できる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英外相、ウクライナ訪問 「必要な限り」支援継続を確

ビジネス

米国株式市場=上昇、FOMC消化中 決算・指標を材

ビジネス

NY外為市場=円上昇、一時153円台 前日には介入

ワールド

ロシア抜きのウクライナ和平協議、「意味ない」=ロ大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中