最新記事

中国

米中天津会談、中国猛攻に「バイデン・習近平会談」言及できず──それでも習近平との近さを自慢するバイデン

2021年7月30日(金)12時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
中国の天津

シャーマン米国務副長官が中国の王毅外相らと会談した天津のホテル(写真は7月25日) Tingshu Wang-REUTERS

アメリカのシャーマン国務副長官は天津で外交部高官と会談したが、中国の猛攻撃に遭い、「バイデン・習近平会談」の赤絨毯を敷くことはできなかった。しかしバイデンはなお習近平と会った時間の多さを自慢している。

会談設定前のいざこざ:高位の対談相手を望んだシャーマン

ウェンディ・シャーマンは国務院副長官なので、中国では外交部副部長に相当する。7月20日、訪日した時にもシャーマンの対談相手は茂木外相ではなく、森健良(たけお)外務事務次官だった。

中国には複数の「外交部副部長級」がいるが、序列1位の斎玉は外交部の中国共産党委員会書記で、序列2位の楽玉成が副部長としてはトップとなる。

そこでシャーマンは最初、楽玉成と対談したいと申し込んだらしい。

しかし中国側は断った。謝鋒(副部長としては4位だが、副部長級序列は5位)がアメリカ担当なので、謝鋒を対談相手とすると譲らなかった。するとアメリカ側は「ならば、訪中をやめましょうか......」と言わんばかりに沈黙を保った。

すったもんだの末に、妥協案として中国側は謝鋒が対談相手であることは譲らず、謝鋒の後に、「おまけ」として「王毅外交部長との対談も付けてやる」ということになったらしく、7月21日になって米中双方が「天津で、謝鋒外交副部長および王毅外交部長と会うことになった」と発表するに至った。

なぜ天津なのかだが、中国は今、北京にコロナ・ウイルスが入ってくるのを警戒して、外国からの来客を北京入りさせない態勢で動いているからだ。

虚勢の張り合い――米中で異なる対談相手を発表

謝鋒と王毅は、26日の午前と午後にわたって、それぞれシャーマンと対談した。

中国では主として謝鋒との対談が数多く報道されたのに対して、アメリカでは王毅との対談だけが公表されているのは、米中の虚勢の張り合いを伺わせて興味深い。

中国では国内向けに「たかだか国務副長官。謝鋒が対応したので十分」というメッセージを発信したいし、アメリカでは権威付けとして、「外交部副部長ではなく、外交部部長(=大臣)が国務副長官に対応したので、シャーマンは中国で非常に高く評価され、アメリカの権威を示すことができた」とアメリカ国民に発信したいのだろう。

そもそもこの会談はアメリカから仕掛けてきたものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

海運マースク、第1四半期利益が予想上回る 通期予想

ビジネス

アングル:中国EC大手シーイン、有名ブランド誘致で

ビジネス

英スタンチャート、第1四半期は5.5%増益 金利上

ワールド

トルコ製造業PMI、4月は50割れ 新規受注と生産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中