全米230万人が読んだ、イラクの戦場で生まれたリーダーシップ論
ベトナム戦争から「対テロ世界戦争」までの30年間、米軍は事実上、持続的な戦闘活動のない状態を経験した。(グレナダ、パナマ、クウェート、ソマリアといった)例外はいくつかあったが、実際の戦闘経験を持つ米軍のリーダーは一握りしかいなくなっていた。シールズ・チームにとっても、それは「空白の年月」だった。ベトナムのジャングルで激しい戦闘を経験した人たちは退役し、彼らが学んだ戦闘のリーダーシップの教訓も失われつつあった。
そんなすべてが、2001年9月11日に変わった。米国本土を襲った恐ろしいテロ攻撃が、米国を再び持続的な戦闘状態へと引きずり込んだのだ。10年を超えるイラクやアフガニスタンでの厳しい戦闘活動を通して、米軍の戦闘部隊のさまざまな階級で、新世代のリーダーたちが生まれた。
このリーダーたちは、教室での仮想訓練や理論から生まれたのではなく、戦争の最前線――前線部隊(フロント・エシュロン)――で、実地体験から生み出された。数々のリーダーシップ理論や仮説が、戦火の試練の中で厳しく試され、米軍のあらゆる階級で、忘れ去られた戦時の教訓が再び――血で――書き直されることになった。
訓練で培われた「リーダーシップの原則」の中には、戦場では役に立たないものもあった。そういうわけで、使えない原則は捨てられ、実効性の高いリーダーシップ・スキルが磨かれて、米軍全体――陸軍、海兵隊、海軍、空軍――および同盟国軍のあらゆる階級から、新世代の戦闘のリーダーが生み出されていった。
米海軍特殊部隊「ネイビー・シールズ」のチームは、このリーダーシップ変容の最前線にいた。この変容は、戦争の勝利と悲劇を通して、とてつもなく困難な環境で成功するには何が必要なのかを、明確に理解することから生まれた。
新世代の戦闘リーダーにまつわる、戦争の物語は数多くある。長年の間に、オサマ・ビンラディンを殺害した勇ましい奇襲のような作戦の成功もあって、「ネイビー・シールズ」は世間の関心をそそり、望んだ以上の注目を集めてきた。そのせいで、組織の秘密にしておくべき側面にもスポットライトが当たってしまった。
本書においては、そうした覆いをこれ以上剝がすことがないよう、注意を払っている。機密計画について詳しく語ったり、自分が関わった軍事作戦の機密保持契約を破ったりしないように。
これまでに、シールズにまつわる数多くの回顧録が出版されている。中には経験豊富で広く尊敬されている隊員が、チームの勇敢な行為や偉業を伝えようと執筆したものもある。しかし、残念ながら一部には、仲間たちにあまり貢献しなかった隊員が書いた本もある。シールズの多くのチームメイトと同様に、私たちもシールズの本が出版される際には、ネガティブな見方をしていた。