最新記事

リーダーシップ

全米230万人が読んだ、イラクの戦場で生まれたリーダーシップ論

2021年7月20日(火)18時23分
ジョッコ・ウィリンク、リーフ・バビン
日の出時の軍事ミッション

guvendemir-iStock


<戦場で流れた血の上に築き上げられた「究極のリーダーシップ」とは何か。「伝説の指揮官」はなぜそれを明かすことにしたのか。2015年刊行以来、全米230万部のベストセラーとなり、世界29言語で刊行されている『米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)伝説の指揮官に学ぶ究極のリーダーシップ』の序文を2回に分けて転載する(前編)>

「ある日、おれは......」

美化された戦争の体験談の多くは、そんな言葉から始まる。ネイビー・シールズのチームで、尾ひれをつけた体験談を語ると、みんなから茶化される。シールズ隊員は面白おかしく、たいていこんなふうに話し始める。

「ある日、いやウソじゃないって、おれはひざまで手榴弾(しゅりゅうだん)のピンに埋まってたんだ......」

この本は、個人の戦争体験を美しく語るためのものではない。シールズは、どこよりもタフな軍事演習とどこよりも厳しい選考プロセスを経て集まった、優秀かつ多才な個人で構成されたチームとして活動している。シールズのプログラムにおいては、チームがすべてなのだ。全体の力は、個人の力をはるかに上回っている。私たちは、プロの戦闘集団である自分たちを「チーム」と呼び、自分自身を「チームガイ」と呼んでいる。

本書では、シールズの戦闘活動や訓練を、私たち2人の目を通して――あくまでも個人的な観点から――描写し、その経験をビジネスの世界でのリーダーシップやマネジメントに応用している。

しかし、シールズでの活動は、私たち個人のものではない。ここで語る物語は、私たちが幸運にも指揮することができた、シールズの小隊(プラトーン)と任務隊(タスクユニット)にまつわるものだ。シールズの狙撃手(スナイパー)であり、のちに『アメリカン・スナイパー』として映画化されたベストセラー本、『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』(原書房)の著者クリス・カイルも、この小隊とタスクユニットの一員(チャーリー小隊の狙撃手長であり、タスクユニット「ブルーザー」の尖兵(せんぺい)[訳注:本隊の前方で警戒や偵察を行う兵士])だった。

彼も、本書に例として登場する戦闘に参加していた。素晴らしい活躍をしながらもいまだ脚光を浴びていない、多くのチームメイトと共に。だから、この本で語られる戦争の物語は、決して私たち2人のものではない。これは、共に任務に就き、共に戦った仲間たちやリーダーたちの――チームの――物語なのだ。戦闘の状況には、チームとしてどのように障害に立ち向かい、どのように難局を克服したかが描かれている。結局のところ、チームがなければ、リーダーシップも存在しないのだ。


 米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)
 伝説の指揮官に学ぶ究極のリーダーシップ

 ジョッコ・ウィリンク 著
 リーフ・バビン 著
 CCCメディアハウス
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、8000件減の22万件 継続受

ビジネス

米9月雇用11.9万人増、予想上回る 失業率は4.

ビジネス

米消費者、42%が感謝祭にクレカ利用予定 前年から

ビジネス

ドイツ経済、第4四半期は緩やかに成長 サービス主導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中