戦闘で陸の孤島と化したエチオピア・ティグレ州の惨状を訴える手紙
Tigray District Leader Offers Dire Account of Deaths, Looting in Region
しかしながら、数々の残虐行為をはたらいたと非難されている隣国エリトリアの部隊をはじめ、戦闘に携わったそのほかの当事者たちが停戦を守るかどうかは不透明だ。ティグレ人勢力の報道官は停戦を「悪趣味な冗談」だと一蹴し、同地域を「完全に解放する」つもりだと宣言した。
マイ・キネタル地区から州都メケレに届いた手紙を確認した保健当局者によれば、このような手紙が州都に届いたのは2度目だという。1通目はオフラ地区からで、150人が飢餓で死亡したと報告する内容だった。この手紙は4月に行われた国連安保理の非公開会合で共有されている。
前述の保健当局者(報復を恐れて匿名希望)によれば、マイ・キネタル地区からの手紙には、現地の悲惨な状況が詳細に記されていた。何千頭もの家畜が略奪され、何トンもの穀物が焼き払われた、などの詳しい記述もある。
ベルヘの手紙によれば、農業従事者が多いマイ・キネタル地区では農家が略奪に遭い、作物を育てるための種さえ手元に残っていない。同地区に一度だけ届いた支援は、1995年の古い国勢調査のデータを基に送られたもので、住民の半数は何も貰えなかった。
3万人超の子ども栄養失調
保健当局者は、マイ・キネタル地区から徒歩で州都に逃れてきた複数の住民から、大勢の人が飢えていると聞いてはいたが、ベルヘの手紙によって危機の詳細と規模がはっきりしたと述べた。「大勢の人が死んでいる。ひどい状況だ」と彼は語り、ほかにもアクセスできない地区が複数あるが、ティグレ州の多くの地域で電話回線が遮断されているため、連絡が入ってこないと明かした。
国連のある人道支援担当官は、マイ・キネタル地区について「我々が手を差し伸べたい、とりわけ重要な地域」だと述べ、AP通信に対して、戦闘が始まって以降、同地区をはじめとする数多くの地区への支援が遮断されていたことを認めた。
国連はティグレ州について、外部からの立ち入りが困難な地域に計160万人が残されていると推定しており、国連児童基金(UNICEF)は6月11日に、支援の手が届かなければ、これらの地域の少なくとも3万3000人の重度の栄養失調の子どもたちに「死の危険が迫っている」と警告した。だが人道支援活動家たちは、に今はまだ激しい戦闘が続いている地域もあり、状況が不安定だと警告している。
今週に入ってエチオピア政府軍が一方的に宣言した停戦も、恒久的なものではない。エチオピア政府は、停戦はティグレ人の農繁期が終わるまで、つまり9月までだとしている。ティグレ州の農業従事者たちが今後、どのような形で作物栽培に必要な種や農具を手に入れることができるのかは、明らかになっていない。