メルケル後のドイツを揺るがす「極右に熱狂する」旧東独の反乱
Still Divided After 30 Years
旧西独圏では伸び悩むAfDも、東部では今や主要政党の1つだ。東部5州全てで第2党につけており、時には投票総数の4分の1以上を獲得することもある。
しかも東部のAfD党員、例えばチューリンゲン州のビョルン・ヘッケや元ブランデンブルク州支部代表のアンドレアス・カルビッツらは西部の党員よりも急進的だ。
対照的に、「緑の党」は東部で振るわない。全国規模の世論調査では一貫して支持率2位につけ、次期連立政権への参加も確実視されているのに、東部では左派系の一部の都市を除けば苦戦している。逆に、旧共産党の流れをくむ「左派党」は西部より東部で善戦している(ただし近年はAfDに押されて従来の勢いを失いつつある)。
世論調査会社フォルサによる直近の調査で、緑の党の支持者は西部で26%、東部で12%。AfDは東部で21%で2位だが、西部では7%。東西で平均して支持されているのは現与党のCDUだけだ。
「再統一から30年たっても、まだ一つじゃない」と言ったのはフォルサの政治アナリストのペーター・マツチェックだ。「依然として2つの異なる有権者集団がある」
問題の根源は壁の「崩壊後」にあった
今年行われた3つの州選挙には、そうした投票傾向の違いが明確に表れた(新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあっただろうが)。
南部バーデン・ビュルテンベルク州と西部ラインラント・プファルツ州で3月中旬に行われた地方選では、AfDが大敗を喫し、緑の党が議席を増やした。
ラインラント・プファルツ州ではAfDの得票率が8.3%で、前回の16年に比べて4.3ポイント減。緑の党は4ポイント伸ばして9.3%だった。
バーデン・ビュルテンベルク州では、11年から州首相を出している緑の党が2.3ポイント増の32.6%を獲得。対照的にAfDは15.1%から9.7%に下げ、州内の支持者の3分の1近くを失った。
一方、AfDは地盤のザクセン・アンハルト州の6月6日の投票で、(新型コロナの影響で支持率が落ちたとはいえ)20.8%を獲得した。16年の選挙時に比べると微減だが、全国平均の得票率の2倍以上だった。
なぜこれほどの違いが出るのか。少なくとも筆者の取材した範囲では、遠い昔の「社会主義」の残滓より、むしろベルリンの壁「崩壊後」の事態に問題がありそうだ。