最新記事

リモートワーク

コロナ収束の近未来に、確実に勃発する「リモートvs出社」バトル

WE'RE HEADED FOR A REAL CLASH

2021年6月24日(木)11時41分
ポール・キーガン(ジャーナリスト)

210629p42_re06.jpg
210629p42_re07.jpg

バンク・オブ・アメリカのベサント(上)やマイクロソフトのナデラ(下)らは生産性低下や長時間勤務といったリモートワークのリスクを指摘する MICHAEL NAGLE-BLOOMBERG-GETTY IMAGES, JEENAH MOON-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

公衆衛生上の緊急事態の中でスタッフを管理するのは企業にとって大変な難題だ。リモートワークと出社のスケジュールを調整して、従業員のさまざまなニーズに対応し、同席する必要のある社員の出社日時を合わせると同時に、リモートの社員もチームの大切な一員だと感じられるようにしなければならない。

これに対応できる企業は人材獲得競争で明らかに優位に立つと、デロイトコンサルティングのダン・ヘルフリッチCEOは言う。実際、同社はテレビ会議アプリZoomを使い、リモートか対面かについて社員の意見を聞いている。

「社員の権限を拡大し、彼らを信頼してチーム内の多様な意見を検討し、それらに対応していく組織が勝つ」

調査結果もそれを裏付けているようだ。フォーチュン誌が選ぶ米主要企業1000社の社員を対象とする世界規模の調査で、職場が好きな社員はそうでない社員に比べて、優れた業績を上げる可能性が4倍高いことが分かった。

調査を実施したベストプラクティス・インスティテュートの創設者でCEOのルイス・カーターは「社員の幸福度と生産性との強い結び付きを示す資料が数多くある」と指摘する。

ワクチン接種が加速するにつれ、企業は出社勤務の方針策定に忙しくしている。健康リスクが下がることを前提に、かつ、ウイルスの変異株と人々の無謀な振る舞いが第4波を招かないことも願いながら──。

他企業との探り合いが続く

一部の企業は、ヘルフリッチが社員に約束する「皆さんの幸福のほうがデロイトの幸福より重要」を指針としている。

逆に、バンク・オブ・アメリカのベサントと見解を同じくする企業もある。彼女は、リモート勤務に関しては「多くの人のニーズが個人の欲望に勝る。企業全体としての役割が当社の選択を左右するべきだ」と、米フォーブス誌に語った。

今のところ「企業は互いに探り合っている。どこが最初に出社勤務に踏み切り、どんな悪評が立つか。他社がすぐ後に続くかどうかは、その結果次第だ」と、ペンシルベニア大学経営大学院のカペリは言う。

シングルファーザーのヒッキーや一部の同僚のように、安全な状況になるまで出社勤務を待ってほしいと願う社員は、自分たちの訴えに上司が耳を傾けてくれることを祈るしかない。

「上司は、そういう要望が高まっているのでもう一度見直す必要があるかもしれない、とほのめかしてはいる。今のところ私の頼みの綱はそれだけだ。上司のご機嫌次第でどうなるか分からない」

言い換えれば、企業側が極めて有利ということだ。職場で激しい議論が続くなか、協力的でない社員がいたら、代わりはいくらでもいる。

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア新型中距離弾、実戦下での試験継続 即時使用可

ワールド

司法長官指名辞退の米ゲーツ元議員、来年の議会復帰な

ワールド

ウクライナ、防空体制整備へ ロシア新型中距離弾で新

ワールド

米、禁輸リストの中国企業追加 ウイグル強制労働疑惑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中