コロナ収束の近未来に、確実に勃発する「リモートvs出社」バトル
WE'RE HEADED FOR A REAL CLASH
DIMITRI OTIS-STONE/GETTY IMAGES
<出社勤務を再開したい企業と、部分的にでもリモートワークを続けたい従業員の激しい綱引きが始まった>
新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、全米でマスク着用などのルールが緩和されるなか、企業はリモートワークから出社勤務へ切り替えを本格化しつつある。
本来なら、「コロナ前の日常が戻ってきた」と希望を感じさせてくれるはずの措置だが、オフィスワーカーの間では戸惑いが広がっている。
まだ感染不安を拭えない人もいれば、子供のオンライン授業が続いているため家を離れられない人もいる。在宅勤務の柔軟性を味わった今、9時から5時までのオフィス勤務には戻りたくないと考える人もいる。
会社と従業員の希望のギャップがどのように解決されていくかは、これから数カ月だけでなく、長期的な雇用の在り方に影響を与える可能性があると専門家は指摘する。
なにしろ今年初めの時点では、海ほど大きなギャップがあった。米ベストプラクティス・インスティテュートの調べによると、経営者の83%は出社勤務を再開したいと考えていたが、フルタイムの出社勤務を希望する従業員は10%だったのだ。
「これは大きな火種になるだろう」と、人材コンサルティング会社コーン・フェリーのメリッサ・スウィフトは語る。「オフィスワーカーの間では、ほとんどの仕事はリモートでできることが証明されたという認識がある。だが、経営幹部はそうは思っていない。両者の希望は真っ向から衝突するだろう」
感染リスクへの懸念が残る
職場の安全は大きな懸念事項だ。アメリカではジョー・バイデン大統領の猛プッシュにより、4月19日以降、全成人がワクチン接種を受けられるようになった。
しかし集団免疫に必要とされる接種率70%を達成するのはまだかなり先になりそうだ。6月初めの時点では、アメリカ人の半分近くがまだ1回もワクチン接種を受けておらず、2回の接種を終えた人は42%にとどまっている。
新たな変異株の不安もある。オフィスのデスクの間隔を空けてアクリル板を設置し、就業スケジュールに余裕を持たせても、従業員の66%は会社での感染リスクを心配していることが、オフィス管理アプリ「エンボイ」と市場調査会社ウェイクフィールド・リサーチが2月に行った共同調査で明らかになった。
この調査では、感染不安は全くないと答えた人は13%しかいなかった。また回答者の62%は、企業は出社勤務する従業員にワクチン接種を義務付けるべきだと考えていた。さらに同じ割合の人たちが、マスクの着用義務などの感染拡大防止措置を、企業が時期尚早に緩和するのではないかと懸念している。
ジェイミー・ヒッキー(42)もそんな懸念を抱く1人だ。シングルファザーのヒッキーには9歳と6歳の娘がいるが、学校はまだ週3日はオンライン授業だ。ヒッキーはペンシルベニア州のオフィス家具会社の現場監督で、4月15日からフルタイムで職場復帰するよう連絡を受けた。