コロナ収束の近未来に、確実に勃発する「リモートvs出社」バトル
WE'RE HEADED FOR A REAL CLASH
2020年春に一時帰休を言い渡され、この1年は失業手当と2つの趣味サイトからの収入でしのいできた。それだけに、仕事に戻りたいのはやまやまだ。しかし商業ビルでの設置工事には感染不安が付きまとうし、娘たちの学校が安全ルールをきちんと守るのかという心配もある。
それに娘たちが自宅でオンライン授業を受けるとき、誰が面倒を見るのか。60歳の母親に頼むこともできるが、まだワクチンを接種していないから感染不安がある。ヒッキーは自宅から仕事をさせてもらえないかと聞いてみたが、上司は現場に出てほしいと言う。
「私自身の心配はしていない」と、彼は言う。「だが娘たちや、既往症を持つ母親に(ウイルスを)うつしてしまうのではないかと心配だ」
誰が子供の面倒を見るのか
ヒッキーのような子育て中のオフィスワーカーにとって、出社再開はとりわけ複雑な問題だ。小さい子供がいて、学校が対面授業を全面的には再開しておらず、託児サービスもまだ完全に戻っていないとき、親が出社勤務を再開すれば、誰が子供たちの面倒を見るのか。ひとり親家庭なら、もっと問題は切実だ。
調査によると、コロナ禍の初期に比べれば対面授業を完全再開した学校はずっと増えているが、まだコロナ前の状況にはとても戻っていない。連邦政府の統計によると、公立小学校で完全な対面授業を再開した学校は半分以下で、中学校の場合は38%にすぎない。約25%の学区は、対面授業を全く再開していない。
学校が対面授業を再開しても、親が感染を心配しているためか、生徒が学校に戻るとは限らない。連邦政府の統計によると2月の時点で、小学4年生の60%、8年生(中学2年生)の69%が、少なくとも一部の授業を自宅で受けていた。そんな状況で、出社勤務の再開を要請された親は難しい判断を迫られる。
登校再開には人種差があることも分かっている。白人の4年生は半分近くが完全な対面授業に戻ったが、黒人の子供は28%、ヒスパニック系の子供は33%にとどまっている。
会社と従業員の綱引きは、まだ始まったばかりだ。オフィスセキュリティー企業キャッスル・システムズによると、3月後半の時点で全米のオフィス稼働率は24%だった(これでも15%以下だった数カ月前と比べれば大きな改善だ)。出社勤務の再開を発表する企業が増えるなか、この数字は今後もっと上昇するだろう。
ニューヨークのオフィス稼働率は6月初めの時点でまだ18・2%にとどまっている。だが、経営者団体「ニューヨークのためのパートナーシップ」の調査によれば、9月までに従業員の62%がオフィスに戻ると企業側は見込んでいる。
一方でテキサス州のヒューストンやダラスでは既に、オフィス稼働率は45%前後まで戻っているという。