最新記事

リモートワーク

コロナ収束の近未来に、確実に勃発する「リモートvs出社」バトル

WE'RE HEADED FOR A REAL CLASH

2021年6月24日(木)11時41分
ポール・キーガン(ジャーナリスト)

210629p42_re02.jpg

ワクチン接種が進み、出社勤務への切り替えも始まったが DANIA MAXWELL-LOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES

2020年春に一時帰休を言い渡され、この1年は失業手当と2つの趣味サイトからの収入でしのいできた。それだけに、仕事に戻りたいのはやまやまだ。しかし商業ビルでの設置工事には感染不安が付きまとうし、娘たちの学校が安全ルールをきちんと守るのかという心配もある。

それに娘たちが自宅でオンライン授業を受けるとき、誰が面倒を見るのか。60歳の母親に頼むこともできるが、まだワクチンを接種していないから感染不安がある。ヒッキーは自宅から仕事をさせてもらえないかと聞いてみたが、上司は現場に出てほしいと言う。

「私自身の心配はしていない」と、彼は言う。「だが娘たちや、既往症を持つ母親に(ウイルスを)うつしてしまうのではないかと心配だ」

誰が子供の面倒を見るのか

ヒッキーのような子育て中のオフィスワーカーにとって、出社再開はとりわけ複雑な問題だ。小さい子供がいて、学校が対面授業を全面的には再開しておらず、託児サービスもまだ完全に戻っていないとき、親が出社勤務を再開すれば、誰が子供たちの面倒を見るのか。ひとり親家庭なら、もっと問題は切実だ。

調査によると、コロナ禍の初期に比べれば対面授業を完全再開した学校はずっと増えているが、まだコロナ前の状況にはとても戻っていない。連邦政府の統計によると、公立小学校で完全な対面授業を再開した学校は半分以下で、中学校の場合は38%にすぎない。約25%の学区は、対面授業を全く再開していない。

学校が対面授業を再開しても、親が感染を心配しているためか、生徒が学校に戻るとは限らない。連邦政府の統計によると2月の時点で、小学4年生の60%、8年生(中学2年生)の69%が、少なくとも一部の授業を自宅で受けていた。そんな状況で、出社勤務の再開を要請された親は難しい判断を迫られる。

登校再開には人種差があることも分かっている。白人の4年生は半分近くが完全な対面授業に戻ったが、黒人の子供は28%、ヒスパニック系の子供は33%にとどまっている。

会社と従業員の綱引きは、まだ始まったばかりだ。オフィスセキュリティー企業キャッスル・システムズによると、3月後半の時点で全米のオフィス稼働率は24%だった(これでも15%以下だった数カ月前と比べれば大きな改善だ)。出社勤務の再開を発表する企業が増えるなか、この数字は今後もっと上昇するだろう。

ニューヨークのオフィス稼働率は6月初めの時点でまだ18・2%にとどまっている。だが、経営者団体「ニューヨークのためのパートナーシップ」の調査によれば、9月までに従業員の62%がオフィスに戻ると企業側は見込んでいる。

一方でテキサス州のヒューストンやダラスでは既に、オフィス稼働率は45%前後まで戻っているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ウニクレディト、BPM株買い付け28日に開始 Cア

ビジネス

インド製造業PMI、3月は8カ月ぶり高水準 新規受

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

ユニクロ、3月国内既存店売上高は前年比1.5%減 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中