コロナ収束の近未来に、確実に勃発する「リモートvs出社」バトル
WE'RE HEADED FOR A REAL CLASH
「オフィス勤務に戻すなんてばかげていると上司には言った。私がしっかり仕事していることは分かっているはず。夜の10時や11時に私からのメールが届いているんだから」
一方で企業幹部の約半数は、リモートワークで生産性が上がるとは考えていない。
バンク・オブ・アメリカのキャシー・ベサントCOO(最高執行責任者)兼CTO(最高技術責任者)はリモートワークの従業員は生産性が低く、ミスを起こしやすいことは自社のデータから明らかだと言う。ミスを見つけてくれる同僚がそばにいないのが理由の1つだ。
リモートワークは長時間労働につながるとの調査結果もあり、燃え尽き症候群も懸念される。昨年秋にマイクロソフトのサトヤ・ナデラCEOは、仕事と家庭生活の切れ目がなくなると「職場で寝ているような気分」になる可能性があると述べた。
リモートで生産性は上がるのか下がるのか
リモートワークの生産性をめぐる議論は今に始まったものではない。リモート推進派がよく引き合いに出すのがスタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授(経済学)らが14年に発表した論文。中国にあるコールセンターでリモートワークを導入したところ、生産性が13%向上し、離職率は半分になったというものだ。
だが反対派は、研究結果は共同作業が必要な職種には当てはまらず、「各人が独立して行うタイプの仕事は外注して、フリーランスの人にリモートでやってもらうべき」という点が明らかになっただけだと主張する。そうすればオフィスの経費も医療保険料などの諸費用も節約できる。
「セールスフォース・ドットコムのような会社がリモートワークを認める場合、オフィスを減らすのが前提ということが多い」と、ペンシルベニア大学経営大学院のピーター・カペリ教授は言う。
「企業側も不動産関連の経費節減効果が、リモートワークで生じ得る生産性や技術革新への打撃を上回るという結論に達するかもしれない。だが正直なところ、経営者もよく分かっていないと思う」
多くの労働者はリモートワークになったおかげで、家族や運動、心身の健康管理、趣味、場合によっては副業のためなど、柔軟に時間を使うことができるようになった。例えばアラバマ大学のウィリアムズは、1日2時間の通勤時間を副業である不動産業に回すことができた。