コロナ後の経済回復、「飛躍する国」と「沈没する国」がはっきりしてきた
THREE WARNINGS FOR EMERGING ECONOMIES
AsianDream-iStock
<世界銀行「世界経済見通し」を分析すると、新興国の中での格差や懸念すべきポイントが見えてくる>
世界銀行が年2回発表する「世界経済見通し」は新興市場や途上国の現状と見通しを評価する上で最も貴重な情報源だ。特に6月8日発表の最新版は重要な点で警鐘を鳴らしている。
ポイントは3つ。第1に、世界経済は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響から回復傾向にあるが、ワクチン接種が急速に進む先進国ではパンデミック前と同水準かそれ以上の回復の兆しが見えるのに対して、新興国・途上国の見通しは明暗入り交じる。
新興市場の伸びが最も期待できるのは東アジア・太平洋地域で、2021年のGDP成長率は7.7%と南アジアの6.8%を上回る見込みだ。現在、中国、ベトナム、バングラデシュがパンデミック前の水準を上回っているが、ベトナムとバングラデシュはもともと低い水準で、高成長を維持できる状況にある。
潜在力ではインドネシアも注目に値する。感染対策は万事順調だったわけではないが、果敢なワクチン接種計画を実施。接種完了率(6月24日時点)は4.6%で、スリランカ(4%)やインド(3.8%)、タイ(3.5%)、ベトナム(0.1%)などアジアの多くの国を上回っている。
大半の途上国の見通しは暗い
プロスペラ(オーストラリアとインドネシアの経済開発パートナーシップ)のデラ・テメングンらは4月16日に発表した論文で、インドネシア経済が周辺国より好調な理由としてコロナ封じ込めと構造改革のバランスが取れている点を指摘した。世銀はインドネシア経済が21年の4.4%から22年は5%と比較的緩やかな伸びを予測する一方、中期的な潜在力も強調している。
しかし途上国の大半で中期的な見通しは暗い。世銀の予測では、新型コロナの影響で世界の貧困者数は21年に1億4300万~1億6300万人増加するが、増加分の半数以上を南アジア、主にインドが占めている。インドの場合、経済ファンダメンタルズ(基礎的条件)は堅調だ。問題は経済運営とコロナ対策のお粗末さで、その結果、「信頼および財政状態が回復していない」という。
第2に、インフレをめぐる警告だ。私たち経済学者はインフレについて実はほとんど知らない。それをカバーするため過度に用心深くなり、物価上昇の兆しが見えただけで厳しい予防措置を支持する。