最新記事

フィリピン

フィリピン独立記念日に燃え上がる反中感情

China's 'Outrageous' South China Sea Moves Slammed in Philippines Independence Day Protests

2021年6月14日(月)16時49分
エマ・メイヤー
マニラの中国大使館前で行われた抗議デモ

フィリピン独立記念日にマニラの中国大使館前で行われた抗議デモ ABS-CBN News-YouTube

<「フィリピン海」の領有を主張し、海上民兵を送り込み、サンゴ礁で石油の掘削まで始めた中国と弱腰のドゥテルテに対し、激しい抗議デモが行われた>

フィリピンがスペインの植民地支配から独立して123年目の独立記念日を迎えた6月12日、一部の人々は祝典に参加する代わりに、首都マニラにある在フィリピン中国大使館前に集結し、南シナ海における中国の活動に抗議した。

農家の女性を支援する団体アミハンのゼナイダ・ソリアーノ議長は、独立記念日は「植民地主義者と外国の抑圧に対する国を挙げての戦いがフィリピンの歴史の基本であることを思い起こさせるイベントだ」と語った。

中国は南シナ海の大部分を中国のものと主張しており、そのなかにはフィリピンが領有を主張する部分も含まれている。

「私たちは本当に自由で独立しているわけではない。国の経済、政治、文化、生活様式に対する外国の支配は続いている」と、フィリピン農民運動(KMP)は声明を出した。

今年3月、西フィリピン海(南シナ海の一部についてフィリピンが使用する呼称)のためのフィリピン国家タスクフォースは、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島にあるブリアン・フェリペ礁で中国の海上民兵(中国軍の関与が疑われる集団)が乗船しているとみられる中国船200隻以上を発見した。タスクフォースは、これらの船舶は漁船に過ぎないという報告を受けたことを確認したが、どれも「実際の漁業活動」の兆候を示していないと報告した。

ドゥテルテの弱腰にも批判

フィリピンは外交ルートを通じて中国に抗議し、中国は船が軍事的な性格のものだという主張をすべて否定した。

「主張されているような中国の海上民兵は存在しない」と、マニラの中国大使館は声明を出した。「そのような憶測は、不必要な刺激を引き起こす以外に何の役にも立たない。この状況が客観的かつ合理的な方法で処理されることを期待する」

中国大使館の言い分は激しい反発を引き起こし、ここ数カ月間、中国とフィリピンの間で緊張が高まっている。フィリピンの経済団体は中国の撤退を求め、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領はこの件について沈黙を守っていることで、かなり批判されている。

「ドゥテルテ政権が西フィリピン海における中国の違法行為を積極的に認めたことは、過去、現在、未来のフィリピン人に対するとんでもない侮辱だ」と、ソリアーノは述べた。

ドゥテルテ大統領は2016年に、中国の習近平国家主席との合意で、中国漁船がフィリピン海域で漁をすることを認めた。ドゥテルテの顧問は、そのような口頭での合意がなされているという報道を否定した。

最後の一撃となったのは、手を出さない約束だったはずのサンゴ礁で中国が石油を掘削し始めたことだ。中国が事後に記者会見で発表した。

中国外務省の汪文斌報道官はフィリピンの対応に関して記者会見でこう語った。「中国の主権と権利と利益を尊重することと、状況を複雑にし、紛争をエスカレートさせる行動を止めるよう強く求める」

これに対し、フィリピン国防省は「中国はフィリピンに自国の海域で何ができるか、何ができないかを伝える権利はない」という声明を発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中