G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か(その1)
●アメリカは中国の「一帯一路」の「透明度がない」とか「強迫的なやり方だ」とか「相手国を債務漬けにして潰している」などと言っているが、その証拠を見せたことはない。
●「一帯一路」対抗策を考えなければならないということは、アメリカは「一帯一路」が成功していると思っているからだろう。
中国建国以来のアフリカとの結びつき
中国は建国以来、アフリカとの連携を重要視してきたのは確かだ。
特に1955年に開催されたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)では、それまで欧米や日本などの帝国主義国家から侵略を受けたり植民地化されたりしていた国々が集まって結束を固めたが、その立役者の一人は中国の当時の周恩来総理だった。以来、中国には「アジア・アフリカ処」や「アジア・アフリカ研究所」がどのような組織の中にもあり、毛沢東など、1958年から1962年にかけたあの大飢饉の間でもアフリカ諸国に食糧や資金を送り続け、支援対象国はアルバニアなど東ヨーロッパの国にも及んだ。
それが1971年10月の中国の国連加盟(アルバニア決議案)に反映されていくのだから、「長期的視野に立った戦略」も尋常ではない。
拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』で詳述したが、自分の存在と毛沢東を重ねている習近平は、毛沢東のこの長期的戦略とアフリカ重視も踏襲している。
したがってアフリカとの連携を強化し、2018年9月4日のコラム<中国アフリカ協力フォーラムで世界制覇を狙う――後押ししたのはトランプの一言>でも触れたように、アメリカが人種を肌の色で区別し、「黒人」として侮蔑するのとは真逆の方向に動き続けてきた。人民大会堂に一堂に集まったアフリカ53カ国の首脳に向けて「私はあなたたちを最も尊敬しています。あなたたちこそは私の最大の親友です。私たちは互いに最も信頼し合う仲間です」と呼び掛けて、人民大会堂が揺れんばかりの歓声と拍手を巻き起こさせている。
だから一般の中国人もアフリカ人を喜んで中国に受け入れることに慣れているし、ハイレベルの人材がアフリカに長期滞在して仕事をしたり、アフリカで養子縁組を含めた家庭を持ったりすることなども違和感なく行われているのが、中国庶民の肌感覚だ。
アメリカはアフリカに溶け込めるか?
それに比べてアメリカ社会における黒人蔑視の歴史は長く、現在もひどい。それは奴隷制度から始まり、アフリカとの付き合いは「黒人」を人間とはみなさない感覚から始まっていることに原因の一つがあるだろう。そうでなくとも白人のエリート意識は強いのに、トランプは選挙のためにそれを助長した。トランプ政権時代に巻き起こったBLM(ブラック・ライブズ・マター、Black Lives Matter)運動に象徴されるように、白人警察による無抵抗な黒人への暴力や殺害行為は後を絶たない。