G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か(その1)
そのたびに50数カ国に及ぶアフリカ諸国が一丸となってアメリカに抗議文書を出すということをくり返している。特にトランプ前大統領がアフリカ諸国などを「糞ッたれ国家」と罵倒したときなどの抗議運動は顕著だ。
またインフラ投資新構想はアフリカ大陸などにある貧しい国々を対象としているので、アメリカなどの先進国がアフリカに投資した場合、果たして先進国の高価な製品を極アフリカの貧しい国々が購入するかという問題もある。当然、廉価な中国製品を購入するだろう。
したがって、B3Wに基づいたG7によるインフラ投資新構想の実現は前途多難だろう。
何と言ってもG7メンバー国のイタリアは「一帯一路」に加盟しているし、日本は安倍前首相が、自分を国賓として中国に招いて欲しいために、交換条件として「一帯一路」への協力を約束してしまった。日本の「第三国協力型」は、イタリアを加盟に持ち込むときにも道具として使われたほどだ。安倍氏の国賓招聘のお返しに習近平を国賓として日本に招く約束をしているために、コロナが武漢で発生した時に緊急に水際対策を取ることを躊躇したため、日本はコロナの阻止に出遅れてしまったという事実もある。このような実害を日本国民にもたらしているのが日本政府の対中姿勢だ。
だからG7で何を宣言しようと、中国にはさほど痛くはない。
決定的な痛手は中欧投資協定の頓挫
それよりも、中国にとって痛手なのは中欧投資協定の頓挫だ。
ウイグル人権問題でEUが中国に制裁を加えたのに対して、中国は報復制裁を行った。その対象人物がEU組織の重要人物であったために、EUは昨年末にようやく合意した中欧投資協定を一時停止すると宣言している。これは中国にとって相当な痛手をもたらしており、中国が報復制裁のレベルを下げない限り膠着状態が続くだろう。
そこに、バイデンはこのたび「G7+EU+NATO」という枠組みで中国への包囲網を増やしていっているので、この締め付けはジワジワとではあるが中国を心理的に追い込んでいくことが期待される。中露首脳会談でプーチンは有利にはなったが、習近平との仲に変化をもたらすことはないだろうと判断される。
慎重に検証をしなければならない要素が多いが、とりあえず「その2」では、アフリカにおける債務の現状を、世界銀行およびジュビリー債務キャンペーン(Jubilee 2000運動の起点となったイギリスの国別組織の後身で、最貧国の債務帳消しを求めて1990年から世界的に広がった社会運動)のデータに基づいて考察することとする。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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