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EU非加盟のスイスが「EU離脱」を発表...一体どういうことか?

SWITZERLAND’S BREXIT MOMENT

2021年6月22日(火)17時44分
ゲオルク・リーケレス(欧州政策研究センター副所長)

だが、EUの我慢もここまで。EUが加盟国すら持たない特権を非加盟国に与えては、EU離脱が相次ぐ可能性もある。

自らの法外な特権を自覚せず、交渉を中止したスイスは、すぐにも経済的問題に直面するだろう。まずは医療機器、次いで機械や化学製品でEU市場へのアクセスを失う。デカップリングは進み、スイス側の損失は年間12億ユーロに上ると推計される。

同時期にイギリスは英領北アイルランド貿易をめぐるEUとの対立で強硬な姿勢を示し、ノルウェーもEEA離れを起こしつつある。これまで安定していると思われたEUの広域連携が揺らいでいるようだ。

それでも、最も苦境に立たされるのはスイスだろう。最近の世論調査では60%以上がIFAを支持したが、同じく過半数がEEA加盟や、イギリスあるいはカナダ方式の対EU関係を支持した。

スイス政府はEUとの二者関係を、直ちに現状に合った形に更新することが必要だ。でなければ、思いもよらない事態が待ち受けるだろう。

©Project Syndicate

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