台湾有事になれば、日本はどこまで介入すべきか...アメリカは何を求めてくる?
What the US Wants From Japan
日米首脳会談を受けて発表した共同声明で約半世紀ぶりに台湾に言及した(21年4月、ワシントン) TOM BRENNERーREUTERS
<台湾海峡の「平和と安定」を日米共同声明に従って守るためには、現実的なプランと迅速な対応が不可欠だ>
4月16日、日本の菅義偉首相は外国首脳としては初めて、ジョー・バイデン米大統領の就任後にホワイトハウスを訪れ、首脳会談を行った。この会談後に発表された共同声明は大いに注目を浴びた。
共同声明の中で両首脳は、台湾海峡の「平和と安定の重要性」と「両岸問題の平和的解決」における共通の利益に言及した。これは(1972年の日中国交正常化前の)69年以来のことで、3月の日米外相会談でも(短いが)同様の言及はあったものの、台湾はこれを歓迎。一方、中国は軽視し、在米中国大使館は「断固反対」を表明した。
だが会談からわずか数日で、台湾問題をめぐる日米の結束は一時的に揺らいだ。菅は今回の訪米について20日に国会報告を行った際、共同声明は「軍事的関与などを予断するものでは全くない」と説明した。つまり有事の際に自衛隊が関与することを示すものではないというわけだ。
これを「逃げ腰」と受け取った中国メディアは、中国が台湾に侵攻しても日本は軍事介入しないと報道。一方の台湾は、日本の「心変わり」は大したことではないと言わんばかりに自力での安全保障を誓った。
菅の発言は矛盾していない
とはいえ、菅の発言は不正確でもなければ、共同声明に矛盾してもいない。どんな状況であれ、台湾と公式な同盟を結んでいるわけではない日本が、無条件の軍事的関与を宣言するのはおかしい。菅の発言はアメリカの戦略的曖昧さを一部借用したものと解釈するべきだろう。日本が関与のレベルを明確にしない限り、中国は台湾侵攻を計画する場合、日米両国の関与の可能性を考慮せざるを得ない。
共同声明での台湾への言及(および日本の関与をめぐる議論)は、ある重要な問いを提起する。台湾有事の際、アメリカは日本に何を要請するのか。その答えは日米同盟にとって極めて重要で、両国が支持表明を実際の計画・準備に結び付けるカギとなる。
少なくとも、アメリカは台湾とその上空および周辺で戦闘作戦を実施する際の拠点とするべく、在日米軍基地の使用を要請するだろう。
60年の日米安保条約改定時に当時の岸信介首相とクリスチャン・ハーター国務長官が結んだ「条約第6条の実施に関する交換公文」では、アメリカと日本は、米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の拠点として使用する場合は日本との「事前協議」の対象とすることで合意した。これらの関与は、日本の作戦を援護する場合を除き、日本から行われるだろう。