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台湾有事になれば、日本はどこまで介入すべきか...アメリカは何を求めてくる?

What the US Wants From Japan

2021年5月19日(水)17時59分
ジェフリー・ホーナン(米ランド研究所研究員)

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南シナ海で海自護衛艦などと共同訓練する米空母ロナルド・レーガン(20年7月) U.S. NAVYーREUTERS

アメリカは台湾を防衛したいが日本は攻撃されていない場合は交換公文の条件に該当し、日米の「事前協議」でアメリカは在日米軍基地を使用する意思を明示する。日本が同意しなければ、アメリカの作戦実行に支障を来す。遠くから作戦を実行するか、日本以外で拠点にできる国を探さざるを得ないが、いずれも難しい。日本の(自衛隊や民間の)基地や港を使うことに日本が反対すれば、アメリカはひどく不利になる。

こうした施設・区域の使用は作戦上不可欠だが、自衛隊による支援は米主導の作戦の兵力増強につながる。そのため、アメリカが日本の関与を要請するのはほぼ確実だ。しかもアメリカは、日本がどの程度関与するかは日本の政府首脳が状況をどう捉えるか次第だと承知している。

日本は攻撃されず、紛争が限定的に思えるなら、日本は自国の安全保障に「重要な影響」があるとの定義にとどめるかもしれない。この場合、法的に日本の関与は非戦闘的な後方支援に限定される。

一方、在日米軍基地を含めて日本が直接攻撃された場合や、日本政府が状況を日本の存亡に関わる脅威と捉えた場合は、日本は戦闘や武力行使も含めて関与する可能性がある。だが、実際に日本が攻撃された場合と同じレベルまで許容するかは不透明だ。

対応は安全保障関連法に基づいて判断

アメリカは言うまでもなく、日本が攻撃を受けたかどうかに関係なく、日本が状況をできる限り広範かつ緊急なものと捉え、作戦上の柔軟性を最大限にすることを望むだろう。戦闘区域の日本の領域への近さと、有事が日本の燃料・食糧供給網に及ぼすダメージを考えれば、これは無理な主張ではないかもしれない。

日本政府が2015年成立の安全保障関連法に基づき、台湾への攻撃を米軍などへの後方支援を行う「重要影響事態」と解釈した場合、アメリカが自衛隊に支援を求める領域はいくつか考えられる。その大部分は、恐らく日本の領域内での支援活動だ。日本の米軍基地は短距離防空手段が乏しいため、米軍基地の保護は日本の重大任務となる。ほかには、日本国内における物資の供給や整備、移動手段や医療サービス等の後方支援が考えられる。

日本の領土からは離れているが他国の領空・領海には入らず、また戦闘エリアから遠い地域については、アメリカは日本に諜報や監視、偵察などの活動に加えて人命の捜索や救助等の支援を求めるだろう。事態が深刻であれば、アメリカは日本に押し寄せる難民への対応や、台湾国内での避難作戦について自衛隊の支援を要請するかもしれない。

仮に日本が直接攻撃されるか、集団的自衛権の行使を認める「存立危機事態」と日本政府が判断した場合、アメリカは安全保障関連法の規定どおり、自衛隊に武力行使を含めた全面的な作戦展開を期待すると思われる。

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