コロナ封じのため国民の帰国禁止...家族に会えないオーストラリア人の嘆き
The New Hermit Kingdom
1人でも感染者が出ればその州境が閉ざされかねない国で、首相がこのような発言をしたのだ。
ニューズ・コム・オーストラリアによると、首相や医学の専門家らが懸念しているのは、「たとえワクチンの接種を受けた人が発症や死亡しなくても、感染してウイルスを広める可能性があるかどうか」だという。
ワクチンが感染リスクを減らし、重症化の可能性を大幅に軽減するという証拠は着実に積み重ねられている。それなのに無症状のケースにこだわるとは、ばかげているではないか。
とはいえ、一部でささやかれているように、モリソンが次の連邦総選挙を見据えた戦略として国境の開放を遅らせているのなら、話は別だ。ウイルスの完全排除を目指すつもりはないとモリソンは言うが、政府の現在の方針の下で国民が「コロナゼロ」以外を容認するとは考えにくく、世界との関係を取り戻す道筋も見えてこない。
だからこそ私をはじめ国外にいる多くのオーストラリア人は、裏切られたと感じているのだ。
最も成功した多文化移民国の不条理
1990年代のオーストラリアの子供は、多文化主義は正式な政策というだけでなく、私たちの国を特別にするものだと教わった。今年2月にモリソンは、「オーストラリアは地球上で最も成功している多文化移民国だ」と語った。
私たちの多文化主義の大部分は、ギリシャやスリランカなど各地の在外オーストラリア人を介した世界とのつながりに支えられてきた。それなのに何万人というオーストラリア人が、祖国に再び足を踏み入れることができるかどうか分からないという状況は、あまりにむなしい。
市民から、もっと怒りの声が上がらないことも驚きだ。最近の調査によると、同胞を帰国させるために今以上の手段を講じるべきだと考えるオーストラリア人はわずか3分の1。新型コロナの拡大阻止にワクチンが有効だと確信している人は半分にすぎない。
一方で、国境閉鎖に関する記事のコメント欄には、不満や被害妄想が渦巻いている。自分たちと同じオーストラリア市民である「甘やかされた国外居住者」を、人権条約に違反している国外の難民収容施設に放り込めばいいと言い出す人さえいる。
ワクチン政策の失敗は、他の国では政治スキャンダルと人々の怒りを引き起こしているが、オーストラリアは違う。
報道では、国境の閉鎖は特権階級だけの問題で、海外旅行は贅沢とされている。人口の30%に当たる750万人が国外で生まれているのに、離れ離れになった親子の声はほとんど聞こえてこない。