新型コロナが「ただの風邪症状を引き起こすウイルス」になると考えられる2つの理由
OUR FUTURE WITH COVID-19
そうした意味においては、私たちにいま求められているのは、重症化した人の命を失うことなく、また、今回のパンデミックで社会、経済的に困窮した人の生活が破綻するような事態を避けながら、早く集団が免疫を獲得し、ウイルスとの穏やかな共存状態(社会が集団免疫を獲得した状況)へと入っていくことだと考える。そのために、ワクチンは大きな希望となる。
社会的影響のパンデミック
人口約900万人のイスラエルでは、2020年12月からワクチン接種が始まり、ユリ・エーデルシュタイン保健相によれば、2021年3月25日時点で人口の半数以上が2回のワクチン接種を終えた。その結果、一時期1万人を超えていた1日当たりの感染者数は400人未満となり、死亡者数は85%、重症者数は70%を超える減少となった。
こうした効果は年齢にかかわらず確認できたという。この事実は、ワクチンは明らかに中和抗体を誘導し感染予防あるいは重症化予防に効果があることを教えてくれる。
一方で、ワクチンには、100万分の1か1000万分の1かは分からないが、副反応が必ずある。
集団で見れば、その確率は100万分の1か1000万分の1かもしれないが、副反応が起こった当事者にとってみれば、それは1分の1の話となる。そうした小さくても大切な物語に、私たちは寄り添う必要がある。
それでも、ワクチンを接種する理由は何かと言えば、それが社会の利益になり、また、個人の利益にかなうからである。
一方で、2030年の世界へ至るまでの道は、国や地域によって違いが出てくる。最も大きな要因は、やはりワクチン接種となる。ワクチン接種が速やかに進んだ国や地域ほど、収束までの時間は短くなる。
今、私たちは複合的パンデミックの渦中にいる。医学的パンデミックと、その医学的パンデミックが引き起こした影響のパンデミックである。
ロックダウンは、社会のデジタル化を進める原動力となったと同時に、持てるものと持たざるものとの格差をさらに広げつつある。それは、国内的格差だけでなく、国際的格差として、先進国だけにとどまらず、途上国でも同様の傾向が見られる。
さらに言えば、そうした影響は、ウイルスによる医学的パンデミックが収束した後でさえ、長く残り続ける。
その社会的影響のパンデミックが収束した時、私たちは、おそらく今とは明らかに異なる社会を迎えているに違いない。それが、パンデミックは時に社会変革の先駆けとなる意味だと思う。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら