中国は、アメリカが去った中東への「積極進出」で何を狙っているのか?
NEW STAR IN THE MIDDLE EAST
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2018年にUAEを訪問した習国家主席 WAM/Handout via REUTERS
<アメリカの穴を埋めるように中東での存在感を増す中国だが、その最大の目的はあくまで経済的な利益だ>
アメリカ史上、最も長い戦争に終止符が打たれる。4月14日、バイデン米大統領は今年9月11日までにアフガニスタン駐留米軍を完全撤退させると表明した。
これは、より広い意味でのアメリカの「脱中東シフト」を示す出来事だ。ならば、アメリカに取って代わる国は現れるのか。
中国には、その意欲があるようだ。中国の王毅(ワン・イー)外相は3月27日、訪問先のイランの首都テヘランで、今後25年にわたって経済・政治・安全保障分野での両国間の協力を強化する「包括的戦略的パートナーシップ(CSP)」協定に署名した。アメリカにとっては気になる動きだ。
CSPは中国にとって外交政策の標準ツールで、イラクやサウジアラビアなどとも同様の関係を結ぶ。今回の協定については、中国が4000億ドル相当の対イラン投資を行うと報じられるなど、規模を過大視する向きがある(両国は具体的な金額を確認していない)。
とはいえ中国が、アメリカの長年の敵国とこの手のパートナーシップを結ぶのは今回が初めてだ。同時に、中国は中東におけるアメリカの最も親密な同盟国であるアラブ首長国連邦(UAE)やエジプト、さらにはイスラエルとも関係を深めている。
今のところ、中国の動機は主に経済面にあると見受けられる。中東諸国との関係強化は、同地域のエネルギー資源へのアクセス獲得に加え、イスラエルのテクノロジー産業との協働を通じて最先端部門での知名度アップも実現する。そのため(自国にとって厄介なことに)中国は近年、イスラエルへの投資を急増させている。
イスラエルは「一帯一路」構想にとって重要な存在でもある。アジアや欧州各地の港に続き、同国の貿易の要衝ハイファ港の運営権は今年から25年間、中国政府系企業が握る。同様に、中国はイランからの原油供給増を見込み、ホルムズ海峡に面する同国の港湾都市バンダルアバスへの海上輸送の直通ルートを確立した。
中国が中東での紛争をあおるのではないかとアメリカが心配する必要は(現時点では)ない。イランとのCSPは軍事同盟ではなく、中国はイランの「天敵」サウジアラビアと軍事演習を実施している。