アメリカはなぜ台湾を支援するのか──背後に米中ハイテク競争
だからトランプは台湾にエールを送り続けた。
トランプのこの戦略は成功し、ファーウェイの5Gスマホ等の勢いは鳴りを潜める結果となった。
世界で圧倒的に強い、一人勝ちのTSMC
TSMCがどれだけ圧倒的に強いか、世界のハイテク市場の最新情報を提供する台湾の調査会社として信用が高いTrendForce(トレンドフォース)が調べた情報から考察してみよう。
以下に示すのは「TrendForce 2020年12月データ」の一部で、「国別・企業別ファウンドリのマーケット・シェア」である。
TrendForceが調べた「国別・企業別ファウンドリのマーケット・シェア」(2020年12月データ)
図表はオリジナルのママにしてある(たとえば、国別の灰色の「Others」の区切りで「7%+7%」が13%になっていたり12%になっていたりするが、それは誤差範囲か何かとみなして無視する)。
注目したいのは、台湾が2020年も2021年(予測値)も全世界の64%を占めていることだ。おまけに、その内TSMCが占める割合は54%である。この圧倒的シェアの前には誰もがひれ伏すとしか言いようがない。
仮にこれを全て中国大陸に持って行かれたとしたら、米中覇権競争において文句なしに中国が勝つことになるだろう。
しかし中国が「一つの中国」原則で台湾(中華民国)の尊厳を激しく傷つけるため、その尊厳を認めてくれるアメリカに台湾側がなびくのは当然のことだ。
もちろんアメリカがエンティティ・リストによって「アメリカ原産品目の組み込み率25%」を基準値としてファーウェイなど中国大陸のハイテク企業への半導体製品提供を禁じているので、半導体製造プロセスにおいて「アメリカ原産品目」を25%以上使用しているTSMCにとっては、アメリカが台湾に近づいてこなくても「制裁を受ける」ことからファーウェイへの半導体製品提供はできない。それが基本にあるにはあっても、いくらでも抜け道は探せるので、「台湾ごと」抱え込みましょうというのがトランプの戦略だった。
中国大陸とのサプライチェーンのディカップリングを徹底させるということである。
その姿勢はバイデン政権になっても変えることができないのが、4月23日のコラム<米上院の「中国対抗法案」に中国激怒!>に書いた「2021年 戦略競争法案」なのである。
これによりアメリカは今後「台湾」を「中華民国」と呼ぶことになる可能性が大きい。
但し、「一つの中国」原則は守りますというのが、この法案の言い分である。
アメリカや日本にシフトしていくTSMC
TSMCはトランプの強烈な誘いにより、アメリカのアリゾナ州に工場を新しく建設することになった。これは昨年5月に発表されたが、昨年12月にアリゾナ州工場建設許可が下りて、2024年から生産開始されることが決まった。台湾の中央行政省庁の一つである経済部が12月22日に発表した。初期投資35億ドルでアリゾナ州フェニックスに工場を建設し、12インチの半導体ウエハーを生産する。