オーウェル的世界よりミャンマーの未来に投資しよう、「人間の尊厳」を原点に

2021年4月23日(金)17時56分
永井浩(日刊ベリタ)

調査のきっかけは、クーデター後の3月8日に丸山市郎駐ミャンマー大使が、国軍が「外相」に任命したワナマウンルイン氏と面会、在ミャンマー日本大使館がフェイスブックに「外相」と表記したことだ。また日本政府が同9日、国際機関をつうじて1900万ドル(約20億9000万円)の緊急無償資金協力を実施したと発表したことにも違和感をいだいた。「日本の対応は、国軍を正当な政府と認定しているように見える。ミャンマー人の思いを数値化して、日本の人たちに伝えよう」と、オンラインで意識調査をはじめた。

調査は3月10日から2・5日間にかけてミャンマー人を対象にGoogle Formsで無作為に回答してもらった。軍が不当な連行、拘束を行っているため、回答者の安全性を優先に考え、無記名、本人特定につながるような電話番号やメールアドレスなども無記入とし、3611人から回答を得た。性別では女性が62・9%と半数以上、年齢別では20~39歳までの66・7%が占め、女性と若年層が高い関心をしめした。

・「ワナマウンルイン氏を外相として受け入れますか?」には「受け入れない」が96.3%と圧倒的に多い。軍事クーデターへの反対意思の表明と理解できる。

・「日本大使がワナマウンルイン氏と会ったこと」には、「受け入れない」が85.5%、「受け入れる」が8.5%、「よくわからない」が6%。日本大使が軍の任命した人物と面談することを拒否するミャンマー人が圧倒的に多いことが明らかになった。

・「日本はミャンマーに900万ドルの緊急無償資金協力金が国連世界食糧計画(WFP)などを経由して支援すると公表されたことを知っていますか?」には、「知っている」55%、「知らない」45%で、回答者の二人に一人が今回の緊急無償資金協力金決定を知っていた。日本が今のミャンマー情勢にどのように対処するのかを注意深く見ているミャンマー人が多いことが分かる。言い方を変えれば、ミャンマー人の日本への期待度が高いともいえる。

・「軍事クーデター下でこのような緊急無償資金協力を実施することは良いことだと思いますか?」には、「思わない」90.8%、「思う」9.2%。

・「日本政府にミャンマー人のために何をしてほしいか?」には、「軍/軍人への奨学金支給を含めた支援を停止してほしい」が最も多く66.2%、「2020年総選挙監視結果を笹川団長より発表してほしい」が24%で二番目に多い。その他は、「軍とNLDとの間に交渉してほしい」が7.8%、「何も関わってほしくない」が2%となっていて、日本政府が粘り強く、軍に説得しようとする姿勢に共感するミャンマー人は残念ながら1割もいないことが分かった。

・「今も日本に対しては良いイメージをもっていますか?」に、「はい」が63.1%で最も多い。次いで、「いいえ、日本に対して今は良いイメージを持てなくなった」が16.2%、「よくわからない」が20.7%。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中