ヨルダン王室の根深い内紛 ハムザ王子のコロナ遺族弔問が国王激怒の引き金に
一方、アブドラ2世は、フセイン皇太子を後継者として前面に押し出す動きを強めており、大半の公式行事では2人が隣り合う位置を占め、外遊の際も同行することが多い。
著名な政治家数人によれば、先月の一連の出来事が表面化する前から、ハムザ王子の動きは国王にとって頭痛の種になっていたという。
故フセイン国王とヌール王妃の間に生まれたハムザ王子は、治安部隊の中枢を占め、ハシミテ王家の確固たる支持層となっている国内各部族と親密な関係を築いている。
ハムザ王子は今年、行動範囲をさらに広げ、地方の農村地域に足を運んだ。現体制に反発する「ヘラク」と称する緩やかな運動組織を形成している、不満を抱えた部族指導者との面会が目的だ。「ヘラク」参加者の多くは、退役した軍・治安部隊経験者である。
ソーシャルメディアには、ハムザ王子が遊牧民のテントの中で座って茶をすすりつつ、国王が十分な雇用や経済的な保障を与えていないことに批判的な長老たちと言葉を交わす様子が投稿された。
ハムザ王子が公の場で自らの見解を口にすることはめったにない。だが、宮廷の考えをよく知る複数の情報提供者によれば、宮廷では、同王子がこうした部族との結びつきを強めているのは、国内の若者に均等な機会を与える立役者として、アブドラ国王とフセイン皇太子に対抗しようとする試みだと考えられている。
また宮廷当局者3人によれば、ハムザ王子の動きは、王族が公的な場所を訪問する際には宮廷への通告を義務付ける規則を無視した行為だという。
事情に通じた3人の関係者は、過去最悪の失業・貧困に対して人々の不満が高まる中で、治安部隊はハムザ王子のあらゆる動きを追跡し、以前よりひんぱんに、王子の動きについて国王に定期報告していると指摘する。
ある治安当局者にハムザ王子に対する監視について尋ねたところ、国家の安全を守ることが各情報当局の職務であるとの答えが返ってきた。
故フセイン国王のイメージを再現
この10年、ヨルダン国内では、生活水準の低下と汚職疑惑をめぐる当局への怒りが広がり、市民による大規模な暴動が発生している。その主な舞台になっているのは、ハムザ王子が地元指導者を訪れた地方及び遊牧民が活動する地域だ。
部族のメンバーであるアブドゥラ・フワイタット氏によれば、今年初め、ハムザ王子はヨルダン南部における部族の集会を訪れ、父である故フセイン前国王は部族に強い親近感を抱いており、もし存命なら、現在のヨルダンで見られるような生活条件の悪化を決して許さなかっただろうと語ったという。
集会の参加者2人によれば、ハムザ王子は、国内がうまく統治されていないという彼らの見解に共感を示したという。ロイターでは、独自にこうした証言の裏付けを得ることができなかった。