ヨルダン王室の根深い内紛 ハムザ王子のコロナ遺族弔問が国王激怒の引き金に
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今年3月14日、ヨルダン王室のハムザ王子(写真)は同国サルト市の病院を訪れ、コロナ患者の遺族を弔問した。写真はアンマンで2004年8月撮影(2021年 ロイター/Ali Jarekji)
今年3月14日、ヨルダン王室のハムザ王子(41)は同国サルト市の病院を訪れ、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)患者の遺族を弔問した。この訪問が国王アブドラ2世(59)の「怒りに火をつける決定打」(国内有力者)になったのは、王位継承をめぐって異母兄である同国王や後継者フセイン皇太子(26)をけん制する動きと受け止められたからだ。
この数時間前、国王自身はこの病院を訪れ、9人の患者が死亡した状況について経営陣を公然と叱責していた。その6日後にはフセイン皇太子が同市を訪れた。
ハムザ王子の行動は王位継承のライバルである若い皇太子への国民の注目をそらすためだった、と複数の高官は語った。事情に詳しい8人の人物は、ハムザ王子の訪問が国王をおとしめたと指摘。当局は同王子を自宅軟禁状態に置き、国家の不安定化を狙った行為に関与したと非難している。
「王位継承」の予想が一転
混乱が続く中東地域にあって、安定した国家として知られているヨルダン。だが、この弔問をめぐる騒ぎは、同国王室内で根深い対立が続いている実態をあぶりだした。
ロイターは現・元当局者や王室関係者10数名に取材し、ハムザ王子への非難につながった出来事について話を聞いた。センシティブな問題だけに、彼らは匿名を条件に取材に応じた。
ハムザ王子はアブドラ国王の王位継承者と目されていたが、国王は2004年に同王子を皇太子から解任し、一族の伝統にならって長男のフセイン王子を皇太子に指名した。
ロイターは王室内の不和の原因や、死亡した患者の遺族を弔問した動機についてハムザ王子にコメントを求めようとしたが、連絡が取れなかった。
政府がハムザ王子の自宅軟禁に至った経緯について王室に問い合わせたが、コメントは得られなかった。同王子は今回の対立が勃発して以来、公の場に姿を見せていない。
アブドラ国王は7日、反乱は鎮圧され、ハムザ王子は「私の保護下にある」と述べた。ハムザ王子は、王族による仲介を経て、国王への忠誠を誓った。
当局者は、14ー16人が「陰謀」容疑で逮捕されたと述べている。
国内各部族との親密な関係
3月にサルト市を訪れた際、ハムザ王子は、病院における人工呼吸用酸素の不足で死亡した患者の遺族に暖かく迎えられた。
病院の酸素不足をめぐってはヨルダン国内で小規模な抗議行動が見られ、参加者の中には、国を救う人物としてハムザ王子の名を叫ぶ姿もあった。
ロイターでは病院にコメントを求めたが、連絡が取れなかった。