ヨルダン王室の根深い内紛 ハムザ王子のコロナ遺族弔問が国王激怒の引き金に
この20年間、ハムザ王子は故フセイン国王の言葉遣いや声、振る舞いや服装までも真似し、国民の支持を集めてきた。部族関係者によれば、ハムザ王子は西側諸国で教育を受けた上品な人物だが、あらゆる部族の方言を身につけることも心がけているという。
ハムザ王子の人気が高まる様子を見て、当局はいよいよ介入する時期が来たと感じた。政界有力者の1人は、「ハムザ王子の動きによって、私たちには選択の余地がなくなった」と語る。
「レッドライン」を越えた王子
ヨルダン軍のユーセフ・フネイティ統合参謀本部議長がアンマン市内のハムザ王子の宮殿を訪れたのは、3日の午後2時前後だった。参謀総長はハムザ王子に、不満を抱えた部族と交流したことで、越えるべきではない「レッドライン」を越えてしまったと告げた。
これに対し、ハムザ王子は怒りを込めて反論した。
「失礼だが、貴官は20年前にどこにおられたのか。私は、故父王の命により、この国の皇太子だった。アラーの慈悲が父のもとにありますように」
「私は故父王に、命ある限り国と民衆への奉仕を続けると誓ったのだ」
こうしたやり取りは、同王子がソーシャルメディアにリークした録音に残っている。この件について、軍広報担当者からは今のところコメントを得られていない。
またハムザ王子の弁護士がBBCに提供した映像の中で、同王子は「自分は軟禁状態にあり、自宅に留まり誰とも接触しないよう命じられた」と話している。
この映像の中で、ハムザ王子は英語で、「自分は外国の陰謀には関与しておらず、現体制は腐敗している」と述べている。
「(ヨルダン国民の)幸福は、現体制では二の次にされている。現体制は、この国で暮らす1000万人の人々の尊厳と未来よりも、自らの個人的な利益、金銭的利益、汚職の方が大切であると判断している」
王族の不和再燃を危惧
専門家の間では、貧困や失業、COVID-19による死者の増加といった国内の潜在的な問題により、王室内の不和が再燃することを危惧する声がある。
故フセイン国王に仕えた最後の侍従長であるジャワド・アル・アナニ氏はロイターの取材に対し、「王族同士の対立は解消した。だが、その契機になった問題に対処しなければならない。失業、COVID-19への対応、そして貧困だ」と語った。
「こうした問題が、国民の苛立ちを高め、各々ひいきの王族を支持しようという動きの原因になっている」
Suleiman Al-Khalidi(翻訳:エァクレーレン)
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