最新記事

テレビ

セクシーで気さくな名優が巡るイタリア旅番組 コロナ禍でも納得の大人気

In Italy With Stanley Tucci

2021年4月9日(金)14時36分
カレン・ハン
米俳優スタンリー・トゥッチ

イタリア系のトゥッチが6つの地域の美味を魅力たっぷりに紹介 ERNEST RUSCIOーGETTY IMAGESーSLATE

<アメリカの名優スタンリー・トゥッチが案内するCNNの「食紀行」番組は、パンデミックただ中の今にぴったり>

粋なスーツにサングラス姿で、車やバイクが行き交うナポリの街中をさっそうと歩くスタンリー・トゥッチ──。

CNNのドキュメンタリーシリーズ『スタンリー・トゥッチ イタリアを探して』は、幕開けから番組の魅力がたっぷり伝わってくる。

トゥッチといえば、親しみやすさを失わずにセックスシンボルのイメージを手にしたアメリカの俳優。食紀行番組の案内役にぴったりだ。彼となら、もちろんグラスを片手に食事を共にしてみたい。

2月14日に放送開始した『イタリアを探して』には、時に新型コロナウイルスの影が差し、現実に引き戻される瞬間もある。だが、トゥッチが優れた俳優でよだれが出るようないい男であるだけでなく、思慮深く魅力的な案内役であるのも明らかだ。

全6回の各エピソードでは、イタリアの異なる地域を取り上げる。第1回はナポリとアマルフィ海岸で、その後はローマ、ボローニャ、ミラノ、トスカーナ地方、シチリア島へ。どこへ行っても、トゥッチは地元住民や昔ながらの友人に珠玉の逸品を教えてくれるよう頼み、一味違う路線を目指して力を尽くす。

トゥッチが異色なのは、多くの食紀行番組の案内役と異なり、イタリア系アメリカ人とはいえイタリア食文化のエキスパートとはいえない点だ。カクテルのネグローニをめぐって、自信満々に大間違いを犯した過去もある(もっとも、トゥッチの前腕に見とれるあまり、そんなことには気付かないかもしれないが)。

トゥッチはほとんどあらゆるものを素直な驚きを持って受け入れる。道中で出会った人々にスポットライトを譲ることもいとわない。例えば、ローマの低所得層ユダヤ人コミュニティーと切り離せない料理、アーティチョークの揚げ物を看板にするユダヤ系シェフや、ナポリの活動家とロマ人女性らの協力関係から生まれた非営利のレストランだ。

番組のテーマが「何を、どう食べるか」だけでなく「なぜ食べるか」であるのは明らか。この問いこそ、良質な食番組のカギだ。

だが初回から、奇妙な感覚も付きまとう。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の渦中で、旅をして、誰かと出会って、人々と交じって食事をすることが必要条件の食紀行番組を制作し、視聴するなんて......。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中