アメリカで再浮上する移民危機、トランプの攻撃材料に
Biden Must Fix Border Situation Fast, Democrats Say
テキサス州ドナの収容施設は未成年の移民で満杯、満足に寝る場所もない Dario Lopez-Mills/Pool via REUTERS
<コロナ対策で実績を上げたバイデン政権だが、移民対策に手こずれば中間選挙でトランプ派の巻き返しも>
米バイデン政権は就任以来、ワクチン接種拡大によるコロナ抑え込みで支持率を稼いでいるが、一方では、アメリカへの移住を目指す中南米出身者がメキシコとの国境になだれ込む「移民危機」が大問題になってきた。米民主党も危機感を募らせている。ジョー・バイデン米大統領がこの状況を速やかに打開できなければ、フロリダ州の別荘で不遇をかこつドナルド・トランプ前大統領が自分の移民政策は「正しかった」と主張し、4年後の政権復帰に向けて勢力を回復しかねないからだ。
国境地帯に集まった入国希望者の中には、家族ぐるみで移住を目指す人たちもいるが、祖国で犯罪グループなどの暴力に耐えかねて、単独で逃れてきた未成年者も多い。保護者が同伴していない未成年の入国希望者数は今年3月、これまでの最多だった2019年5月の約1万2000人を上回り、約1万9000人に達した。
バイデン政権は、移民政策では当初メッセージの発信の仕方でつまずき、その後はもっぱら今の状況をもたらしたのはトランプの責任だと主張し続けてきた。トランプの強硬な移民「追い返し」政策のせいで、国境地帯の収容施設にはベッドなどの十分な設備もなく、人道的な収容ができる状態ではない。冬が終わり、気候が温暖になる今の時期は毎年、入国希望者が殺到することが分かっているが、就任後まもないバイデン政権は、彼らを収容する準備を進める時間もないまま、この季節を迎えることになった、というのだ。
甘い顔をしたせいだと批判
だがトランプとその取り巻きにとっては、今の状況は民主党批判の格好の材料になる。人道的な立場からトランプの「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策を激しく批判してきた民主党が、皮肉にも最悪の人道危機を招いているようにも映るからだ。
民主党のホアキン・カストロ下院議員(テキサス州選出)によると、トランプは入国希望者の扱いで「非人間的な冷酷さ」を見せつけてきたが、今は「それ見たことか」とバイデンの移民政策を批判できる立場になった。
「状況を改善できなければ、民主党は(トランプの)強引な理屈づけで大ダメージを受けかねない」
カストロの言う「強引な理屈づけ」とは、大統領選で人道的な移民政策を唱えていたバイデンは、トランプが不法移民に実施した「親子引き離し」のような厳しい法的措置を取れず、それを見越して中南米から不法移民予備軍が大量に押し寄せ、今の危機的状況になった、というものだ。