最新記事

移民政策

アメリカで再浮上する移民危機、トランプの攻撃材料に

Biden Must Fix Border Situation Fast, Democrats Say

2021年4月8日(木)18時31分
エイドリアン・カラスキーヨ

事実はどうあれ、国境地帯の現状を見れば、そうした理屈が説得力を持ってしまうと、カストロはじめ民主党議員は嘆く。実際、世論調査を見ると、移民問題に対する有権者の関心は高まっているようだ。

米調査会社モーニングコンサルトの3月末の調査によると、国境地帯に未成年者が殺到しているというニュースを「多く」見聞きすると答えた人は、有権者の40%に上った。AP通信が4月5日に発表した調査でも、国境地帯での未成年者の扱いについて、バイデンのやり方に批判的な人が40%、理解を示す人が24%、どちらとも言えないと答えた人が35%を占めた。

民主党のヘンリー・クエラー下院議員(テキサス州選出)は4月4日の日曜には、教会に行ってもスーパーに行っても、地元の支持者にこの問題について文句を言われたと明かす。

「『一体どうしたんだ、民主党政権なら、もっといい仕事をすると思っていたのに』と言われるんだ」

クエラーもトランプとその取り巻きが国境地帯の状況を「政治的な武器にする」ことを懸念しており、中間選挙で勝敗のカギを握る無党派層の支持を失うことが「気がかりだ」と話す。

バイデン政権は新型コロナウイルス対策で大きな成果を挙げているが、移民政策でつまずけば、それが帳消しになりかねないと、クエラーは言う。「バイデン大統領はワクチン接種の推進で手腕を発揮し、経済対策でも救済法案を通すため、われわれは議会で頑張ってきた」

移民が再び争点に

だが共和党が移民政策で攻撃キャンペーンを張れば、有権者の関心がそこにクギ付けになりかねない。中間選挙で負けたくなければ、バイデン政権は「できるだけ早くこの問題を解決し、前に進む」べきだと、クエラーは力説する。

アリゾナ州のジャン・ブリュワー元知事(共和党)の選挙参謀・顧問を務めたチャック・カフリンは現在、同州で政治コンサルティング会社ハイグラウンドを経営している。同社は昨年の選挙戦中にアリゾナ州では移民問題が争点ではなくなったことを、いち早く世論調査で明らかにした。

だが今や状況は変わり、移民排斥の主張が説得力を持つような風向きになっていると、カフリンは言う。

「移民問題が再び有権者の最大の関心事になっている。これは数年ぶりの現象だ」と、4月8日に発表する予定の調査結果を示して、彼は語った。「特に中高年層、50歳以上の有権者の関心を引いている」

ハイグラウンドの調査では、コロナ禍のさなかにもかかわらず、共和党員の62%、元共和党員の41%が、最大の関心事は移民政策だと答えた。カフリンも「トランプ党」と化した共和党に嫌気がさして離党したが、彼の見るところ、離党組は従来の無党派層より有権者登録をする確率がはるかに高いため、アリゾナ州の場合、2022年の中間選挙では無党派層の有権者が倍増し、選挙の行方を決する勢力になる可能性が高い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中