最新記事

移民政策

アメリカで再浮上する移民危機、トランプの攻撃材料に

Biden Must Fix Border Situation Fast, Democrats Say

2021年4月8日(木)18時31分
エイドリアン・カラスキーヨ

中間選挙に向けてトランプ派は次のようなメッセージを出すと、カフロンはみている。トランプ政権下ではアメリカ人は不法移民から守られていたが、バイデン政権は犯罪者だろうと「誰だろうとお構いなしにどんどん入国させる」、というものだ。

カフロン自身はこのメッセージを信じていないが、有権者にとっては分かりやすい主張で、政治的には有効だと言う。

「特に中高年層は効果がある。この層は元々、バイデンと民主党の左派が急進的な改革を進めるのではないかと警戒しているからだ」

だが一方には、共和党が巻き返しを図るには、移民問題を攻撃材料にするしかないのが実情だ、との見方もある。バイデン政権は発足早々、大手柄を上げた。コロナ対策の救済計画法は有権者を大いに満足させているし、インフラ整備法案も時間はかかるにせよ、議会の承認を得られそうだ。エコノミストはバイデン政権の経済対策を高く評価しており、アメリカ経済の長期的な見通しは明るい。バイデン政権下でアメリカ人の生活が悪化したと主張するには、共和党は移民問題を持ち出すくらいしか手がない、というのだ。

トランプの手法は通用しない?

民主党は、入国希望者の殺到は季節的なもので、根本的な原因は中南米諸国の治安や経済状況にあると主張。バイデンに限らず、歴代のアメリカの大統領は漏れなく、この時期に中南米出身者の大量流入に手を焼いてきたと反論している。

さらには、昨年の大統領選の結果を見ても、トランプの手法がもはや「賞味期限切れ」なのは明らかだと指摘する向きもある。

「政界復帰を目指すなら、トランプはまたもや恐怖をあおる戦術に頼ろうとするはずだ。事実を捻じ曲げ、自分がさも優れた移民政策を実施したかのように吹聴するだろう」と語るのは、アリゾナ州に拠点を置く民主党の弁護士ロイ・ヘレラだ。

「だがその手が通用する保証はない。トランプの主張に耳を貸す人もいるだろうが、それは少数派だ。もはや何を言っても、大多数の有権者はまともに相手にしない」


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中