ミャンマー「SNS戦争」、国軍対フェイスブック
Another War for Democracy
昨年2月には、EUの欧州委員会がフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOに対してヘイト投稿やフェイクニュースに対する「全ての責任から逃れられない」と断じ、フェイスブックは媒体にすぎないとして罰則の回避を求めたザッカーバーグの主張を拒んだ。
またヘイト対応の遅れに業を煮やしたスターバックスやコカ・コーラなどの大手民間企業も同社への広告を一時的にキャンセルするなど、厳しい姿勢で迫っている。
悪いことに、フェイスブックにはミャンマーにおける「前科」もある。18年、イスラム教徒の少数民族ロヒンギャの虐殺問題で調査を行った国連は、その報告書でフェイスブックがロヒンギャに対する「憎悪拡散を試みる人々にとっての都合のいいプラットフォーム」になっていると指摘した上で、同社の対応が「非効率かつ遅きに失している」と厳しく断罪。フェイスブックも対応の遅れを認めた。
「憎悪をあおるソーシャルメディア」という不名誉なレッテルを貼られたフェイスブックにとってミャンマーで起きているクーデターは名誉挽回の機会でもある一方、対応を誤れば信頼が地に落ちかねない修羅場でもある。ミャンマー軍と市民の対立は、フェイスブックにとっても民主主義の精神を証明する戦いなのだ。
それでもミャンマー国民はフェイスブックを「相棒」に軍と戦っている。
デモ隊の取り締まりを強める捜査当局は、デモが解散した後の夜間を狙い、住宅地を訪れてはデモ参加者を拘束する。そうした動きに対処するためのマニュアルもフェイスブックで共有されているのだが、マニュアルで最も大切なことは「当局者が来たらフェイスブックライブで中継すること」だ。
ある女性市民は言う。「今この瞬間も市民たちは隠れながら必死にスマホで撮影してフェイスブックに投稿し続けている。軍が私たちの分断を画策するならば、私たち市民はあらゆる人種が集結して、フェイスブックを武器に連帯を示す」
国民の信頼に応え、自らに注がれた汚名をそそぐことができるのか──フェイスブックが背負う十字架は重い。