ミャンマー「SNS戦争」、国軍対フェイスブック
Another War for Democracy
今回のクーデターにおいても、Z世代と呼ばれる若者たちを中心にフェイスブック上での抗議活動が勢いを増している。2021年2月22日には「2」が5つ入るこの日に大規模なゼネストを起こし、「22222運動」として歴史に刻もうと呼び掛ける投稿が瞬く間に拡散。これを受けたデモはクーデター以降最大規模となり、全土にわたって約100万人に及ぶ市民が参加した。
また、治安部隊がデモ抗議に参加していた市民らに発砲して2人が死亡した際も、現場から担架で運ばれる負傷者の姿や、銃撃を受けた直後の被害者の様子を捉えた映像が次々にフェイスブックで拡散された。
一方の軍も、フェイスブックやユーザーの対応に徹底抗戦してきた。クーデター直後には国家の「安定」を保つためとして、フェイスブックの遮断措置を取った。
軍はあらゆる手段で抵抗
これに対し、市民が次々とバーチャル・プライベートネットワーク(VPN)を経由してフェイスブックに「復帰」して抗議の声を拡散し続けると、軍は「インターネットに関する当局の管理権限を強化する新法案」の策定に動いた。要はインターネットを規制する巨大な権限を軍に付与するという内容で、利用者の個人情報を提供する義務も含まれるとされる。
言論の自由が侵害されるとの懸念を募らせた市民は即座に反応。法案の草案もまた、フェイスブック上で拡散された。さらにフェイスブックやグーグルなどが加盟するアジアインターネット連盟は2月11日、「国軍指導者に市民を検閲し、プライバシーを侵害する前例のない権力を与えることになる」との懸念を表明した。Z世代をはじめ、軍への非難が国内外で高まりを見せている。
それでも国軍の暴走は止まらず、次々と狡猾な手段を使い市民に恐怖を植え付けている。例えば2月12日には、突如として2万3000人以上の服役囚らを釈放すると発表、実行に移した。市民の間では恐怖から疑心暗鬼が生まれ、夜中に彼らが民家に放火する、子供を誘拐するなど、真偽の定かでない情報がフェイスブック上で多数拡散され始めた。軍は自ら投稿せずとも、市民を通じて恐怖の拡散に成功したわけだ。
ヤンゴン出身のある女性はこう話す。「この手法は1988年のクーデター以降、軍の常套手段。市民の連帯を破壊しようと企んでいる。複数のショッピングモールなどが軍に攻撃されるだろうという噂も流れた」
検証されないままの写真や映像はさらに蔓延し、「服役囚が覚醒剤を打たれて解放され、暴動をそそのかされている」「服役囚が貯水タンクに毒を混入しようとしている」などの噂も広がるなど、軍発信とみられる投稿はその攻撃の手を緩めなかった。