中国進出企業は今すぐ撤退せよ
LEAVE CHINA NOW
消費者の感情は無視できない。欧米の消費者は時事問題への関心が以前より高いだけでなく、企業にも同じことを求めるのだ。
デロイトの調査報告書「2021グローバル・マーケティング・トレンズ」では回答した消費者の79%が、新型コロナウイルスに関するブランドの行動について、顧客や従業員、コミュニティーを手助けするポジティブな例を思い出すと答えた。それによって23%の人はブランドに対する認識が良いものに変わり、19%が購買行動に大きな影響を受けた。
ただし、当然その逆もある。回答者の66%がブランドのネガティブな行動の例を記憶しており、それでブランドのイメージが悪くなったという人は31%、購買行動に大きな影響を受けたという人は26%だった。
「世界の工場」の曲がり角
21世紀の強制収容所を連想させること以上に、ネガティブなことがあるだろうか。ウイグルをめぐってブランドにダメージを与えるようなニュースは、今後も続くだろう。
昨年、ディズニーの新作映画『ムーラン』が注目を集めたのは、新疆ウイグル自治区で撮影されたことだけが理由ではない。エンドロールで謝意を示した協力機関の1つトルファン市公安部門が、人権侵害に関与したとして2019年に米商務省から制裁を受けていたのだ。
デロイトのレポートによれば、ブランドに強制収容所の影が少しでもちらつけば、欧米の顧客の4人に1人が離れていく。こうしたイメージはブランドにダメージを与えるだけでなく、機関投資家を不安にさせる。
南アフリカでは1980年代に、有力な機関投資家が、アパルトヘイト(人種隔離政策)と関係ある企業から手を引いた。
もちろん、複雑な設備を持たないアパレル企業でも、事業を整理して市場から撤退するのはそれなりに大変だ。
中国での生産を諦めることと中国市場で販売をしないことにも大きな違いがある。スターバックスのような飲食チェーンにとって中国から引き揚げることは、中国の消費者を完全に排除することになる。
とはいえ、多くの企業が既に、生産の一部を中国から主に他のアジア諸国へと移している。政治的な理由からではなく、中国が世界の工場としての魅力を失いかけているからだ。
ベトナムは今や衣料品製造の拠点となり、タイには自動車メーカーが集まっている。インドはハイテクと医薬品業界の拠点としての地位を固めつつある。ワクチン製造世界最大手とされるインドのセラム・インスティチュートは今年1月から、英アストラゼネカの新型コロナのワクチンを製造している。