最新記事

中国

中国進出企業は今すぐ撤退せよ

LEAVE CHINA NOW

2021年3月31日(水)07時00分
エリザベス・ブラウ(アメリカン・エンタープライズ研究所研究員)

magSR20210331leavechinanow-2.jpg

新疆ウイグル自治区カシュガルの「再教育」施設で職業訓練を受ける人々(2019年) BEN BLANCHARD-REUTERS

自国と中国政府の板挟みに

ナイキ、アップル、コカ・コーラなどもウイグル問題でまずい対応をし、消費者の反発を買った。強制労働による製品の輸入を禁止する米「ウイグル強制労働防止法案」を骨抜きにしようと、ロビー活動を展開したのだ。

結局その動きは不買運動を招いただけで、法案は昨年9月に米下院を圧倒的な支持を得て通過し、上院でも近々承認される見込みだ。

中国に進出したグローバル企業が直面するリスクはほかにもある。中国政府はスウェーデン政府に華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)製品の使用禁止を取り下げさせようと、スウェーデンの通信機器メーカー、エリクソンのCEOに圧力をかけた。スターバックスも同様の憂き目に遭った。

ファーウェイ問題で中国政府に糾弾された欧米企業がどのくらいあるかは想像に難くない。

こうしたリスクがあっても企業が中国にとどまるのはなぜか。聞くのもやぼだろう。

中国は人口14億の巨大市場で、「世界の工場」とうたわれた優れた生産インフラがある。自動車や家電など高度な製造技術が求められる製品のメーカーにとって、中国の工場は不可欠の生産拠点だ。

さらに意地悪な質問をしよう。グローバル企業の経営陣は、自国政府から譲歩を引き出すよう中国政府に迫られたらどうするか。工場誘致のための優遇措置を受けていればなおさら、中国政府の圧力には抵抗し難いだろう。

あらかじめ対処法を練っていたとしても、自国政府が中国のルール違反に制裁を科し、中国側が理不尽な報復措置で応じる事態になったらどうするか。オーストラリアの農産物輸出業者は、それによる大損害を経験済みだ。

「中国市場に供給するリスクは確実に高まっている。2021年はオーストラリアにとって、中国への依存度が下がり始める分岐点になる可能性が高い」と、オランダを拠点とする金融サービス企業のラボバンクで食品・農業ビジネスのリサーチ部門を率いるティム・ハントは語る。

一方で、欧米の市民は中国に対し、数年前より後ろ向きになっている。ピュー・リサーチセンターが昨年夏に行った世論調査では、オーストラリア人の81%が中国に好ましくない見方を抱いており、2017年の32%から増えている。

同様にスウェーデン人は49%から85%、イギリス人は37%から74%、アメリカ人は47%から73%、カナダ人は40%から73%、ドイツ人は53%から71%に増えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中