イタリア、ワクチン接種後の死亡めぐり検察が捜査 医師と看護師に業務上過失責任は問えるか?
アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンに深刻な副反応の懸念が広がる中、欧州各国では接種中断の動きが相次いだ。とりわけイタリアでは、接種後の死亡をめぐって犯罪容疑が持ち上がり、混迷の度が深まっている。写真はローマで9日撮影(2021年 ロイター/Guglielmo Mangiapane)
アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンに深刻な副反応の懸念が広がる中、欧州各国では接種中断の動きが相次いだ。とりわけイタリアでは、接種後の死亡をめぐって犯罪容疑が持ち上がり、混迷の度が深まっている。
今月11日、シチリア島の都市シラクサの検察官は、医師2人、看護師1人に対し過失致死容疑での捜査を開始した。ある海軍将校が、アストラゼネカ製ワクチンの接種を受けてから数時間後に急死したことが発端だ。
ガエタノ・ボノ検察官は、同じ製造ロットのワクチン数万回分をイタリア全土で差し押さえることも命じた。ボノ検察官はロイターの取材に対し、予防的な措置だと説明しているが、医療従事者たちは口々に不必要な措置だとの怒りの声を上げている。
イタリアも他国同様、コロナ危機の克服に向け、ワクチンの集団接種に希望を託している。同国のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)による死者は欧州連合(EU)加盟国の中では最多の約10万5000人。そればかりか、コロナ危機は同国に第二次世界大戦後では最悪の景気後退をもたらしている。
ワクチン希望は国民の6割
今年9月までに国民6000万人の大半にワクチン接種を行うという計画は、前途多難なスタートを切った。ワクチン供給のペースが予想以上に遅れているうえ、他社製に比べ輸送が容易で低コストであるアストラゼネカ製ワクチンの評価が芳しくないためである。
シラクサの事件から数日後、イタリア北部の検察官が警察に対し、やはり接種後の急死事例を受けて、同社ワクチンの別の製造ロットを押収するよう命じた。
イタリアの司法当局の動きに続いて、ドイツやフランス、イタリアなど欧州の10数カ国が同社製ワクチンの接種を中断した。接種を受けた人の中に稀少な血栓症がごく少数見られたとの報告を受けた措置である。