最新記事

日米同盟

米バイデン政権初の外国訪問で国務・国防両長官が携えてきた対日不満

Blinken and Austin in Japan to Bolster Asian Allies

2021年3月16日(火)14時23分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者・米国防総省担当)

その後、安倍の側近だった菅義偉が総理大臣に就任したが、菅は安倍ほど防衛面の改革に熱心ではない。それでも(特に中国が先日、2021年の国防費を前年比で7%近く増額すると発表したことを受けて)一部には、アメリカは今後も日本に対して国防費を増額するよう圧力をかけ続けるべきだという声がある。

国防総省のある元高官は「日本側が拒絶するまで、圧力をかけ続けるべきだ」との考えを示し、こう述べた。「日本側にもっと多くを負担させることができれば、大きな相乗効果がもたらされる可能性がある」

日本は既に、アメリカと共同開発した迎撃ミサイルSM3(スタンダードミサイル3)を搭載したイージス級の駆逐艦を沖合に配備しており、F35ステルス戦闘機の製造にも参画している。だが2020年6月には、米国製の迎撃ミサイルシステム、イージス・アショアの配備停止を決定し、代わりに国産システムの開発を進めている。米国防総省としては、この点についても日本に圧力をかける考えかもしれない。

米国防総省のある高官は、「我々は心配なのだ」と語った。「我々としては、スケジュールがどうなっているのか確認したい。日本の防衛政策は、我々にとってもきわめて重要だ。彼らが何をするか、何をしないかによって、日本を防衛するために我々にどんな手助けができるかも変わってくる」

駐留米軍の設備強化、韓国に比べて「不十分」

イージス・システムをはじめとするミサイル防衛システムは、小型化した弾頭を搭載したロケットが大気圏に再突入する直前に迎撃することができるシステムだが、このシステムに対してもっと懐疑的な見方をする専門家もいる。米海軍大学のジェームズ・ホームズ教授(戦略および政策)は、「弾丸を弾丸で撃つのはとても難しい」と指摘する。

冷戦中、アメリカはソ連から核ミサイルが発射される可能性に備えて、西ドイツの飛行場にある鉄筋コンクリート製の格納施設で自国の戦闘機を守っていた。核兵器保有国である北朝鮮を隣人に持つ韓国も、2万8500人の米兵の駐留施設の強化については、日本よりも優れた仕事をしていると前述の国防総省高官は指摘し、それに比べて日本の米軍施設は保護が手薄だと述べた。

「現在の米軍基地や関連施設には、必要な強化措置を施した構造物が必ずしも十分に揃っていない」とこの高官は延べ、こう続けた。「日本もそれを承知しているし、彼らは自分たちの飛行場の駐機場や滑走路、燃料施設や弾薬庫についても不安を抱えている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サムスン、第1四半期のAI半導体低迷を警告 米の対

ワールド

ガザ検問所に米退役軍人配置へ、イスラエル・アラブ諸

ワールド

米レーガン空港、ヘリとのニアミス事案頻発 80年代

ビジネス

コマツ、今吉専務が社長就任へ 小川社長は会長に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中