最新記事

米中関係

米空母の南シナ海派遣はバイデン政権の「不安の表れ」──中国専門家

U.S. Military Near China a Sign of Joe Biden's 'Insecurity'—Chinese Analyst

2021年3月5日(金)16時44分
ジョン・フェン
米海軍の空母セオドア・ルーズベルト 

アメリカ海軍の空母セオドア・ルーズベルトと甲板から飛び立つ艦載機(2020年3月、フィリピン海) U.S. Navy/REUTERS

<2021年に入って米空母打撃群の南シナ海派遣が増えていることについて、専門家が中国政府に警戒を促した>

米軍が南シナ海に頻繁に船舶や航空機を派遣していることは、ジョー・バイデン米政権の「不安」大きさと、中国軍によるいかなる「大きな動き」も阻止しようという意志の表れだ――中国の海洋専門家が、こう指摘した。

北京大学の胡波教授は3月1日に発行された学術誌「World Affairs」に発表した論説の中で、米海軍の空母打撃群が定期的に中国沖に表れるようになる日も近いかもしれないと、中国政府の政策立案者たちに警告を発した。

「アメリカは空母の配備パターンを変えてきている。南シナ海と周辺海域で、中国に狙いを定めた軍事演習を強化したいと考えているからだ」と胡は指摘した。「万が一の事態に備えて、(中国との)争いに勝てる能力をつけようという計画だ」

北京大学のシンクタンク「海洋戦略研究センター」のディレクターも務める胡はまた、南シナ海への米軍の配置は、アメリカが中国に対する抑止力を強化し、人民解放軍がいかなる「大きな動き」を取るのも阻止する上でも役立つとも指摘した。

米軍偵察機の飛来が増加

胡は、南シナ海における米軍の最近の動きは「新政権の不安心理に関係がある可能性が高い」と分析。2021年に入ってからセオドア・ルーズベルト空母打撃群が3週間のうちに2回、同海域に派遣されたことや、2月にセオドア・ルーズベルト空母打撃群とニミッツ空母打撃群が合同訓練を実施したことが、それを裏づけていると述べた。「アメリカの空母が南シナ海に入っても、もうトップニュースにもならない」

胡は北京で米軍など諸外国の軍による中国周辺での動きを調べるシンクタンク「南海戦略態勢感知計画(SCSPI)」の主任も務めている。

SCSPIは3月2日付の報告書の中で、2月には米軍の偵察機が75回、南シナ海上空に飛来したと報告。この「増加」と時期を同じくして、空母打撃群の軍事演習や、米艦船のその他のミッションが実行されていると指摘した。

米海軍のミッションは以前ほど定期的には行われなくなっているが、戦闘への即応性を目的とした配備の回数は増えていると、胡は論説記事の中で分析。米軍の艦船は定期的にフィリピン海を航行し、中国の「接近阻止・領域拒否(できるだけ遠方で米軍を撃破する)」戦略に対抗して、南シナ海や台湾海峡のような「紛争地域」での不測の事態に介入するための演習を行っていると述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中