最新記事

デマ情報

「中国は反米キャンペーンに100万人を投じている」米軍司令官

China’s 1 Million-Strong Disinformation Machine

2021年3月11日(木)18時58分
デービッド・ブレナン
中国 北京 人民大会堂 警備

中国人民政治協商会議が行われた北京の人民大会堂で監視にあたる警備員(3月3日) Jason Lee-REUTERS

<「アメリカはいざという時守ってくれない」と周辺諸国に思い込ませ、アジアの盟主を目指していると、米インド太平洋軍司令官が警告>

中国は100万人規模の「デマ情報マシン」で、アメリカとそのパートナーである民主主義国の信頼関係を壊そうとしている──米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官は3月9日、米上院軍事委員会の公聴会で、そう警告した。

デービッドソンによれば、中国の狙いは、アメリカとアジアの同盟国を分断し、アジア太平洋地域で覇権を確立することだ。

「いざという時アメリカは頼りにならない」というメッセージを広めて、アメリカの影響力を低下させようとする情報戦略は、中国とロシアに共通すると、デービッドソンは語った。

「中国は既存メディアとソーシャルメディアの両方を駆使し、ざっと100万人を動員して、プロパガンダを繰り広げている」

その目的は「アメリカの利益を損ない、中国の利益にかなうような論調を広め、同盟国や友好国がアメリカの信頼性を疑うように仕向けて、同盟関係を弱体化させる」ことだと、デービッドソンはみる。

アジアが覇権争いの舞台に

中国が民主主義の統治システムを貶め、周辺国とアメリカの同盟関係を引き裂くようなプロパガンダを行うのは今に始まったことではない。

だがここ数年、新疆ウイグル自治区や香港、チベット自治区などにおける人権侵害や、南シナ海における領有権問題、台湾問題、さらには新型コロナウイルスのパンデミックで、中国が国際世論の批判を浴びる場面が増え、中国の政府系メディアは対抗して盛んにプロパガンダ報道を行うようになった。さらにはアメリカとの貿易摩擦やインドとの国境紛争絡みでも、大量の偽情報が流され、中国のフェイクニュース戦略に対する警戒感が高まっている。

特に新型コロナ関連では、中国共産党は精力的に偽情報を拡散している。中国の隠蔽体質がパンデミックを招いたという批判を交わし、欧米諸国の手ぬるい対応が感染を拡大させ、世界経済を混乱させたと責任転嫁するためだ。

デービッドソンによれば、中国の野望は、第2次大戦後一貫して東アジアの安全保障体制を支えてきたアメリカを追い出してアジアの盟主になること。そのためには、偽情報キャンペーンが欠かせない。

オバマ政権以降、米政府は次の覇権争いの舞台はアジアと見て、この地域に軍事的リソースを投入してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中