トランプ弾劾裁判、弁護団が展開する8つのトンデモ反論
TRUMP’S CRAZY DEFENSES
トンデモ度7位「私はやっていない」
人気アニメ『ザ・シンプソンズ』の決まり文句「僕、やってない」から借りてきたような主張だが、まあ悪くはない。
もちろん私たちは、トランプが暴力的で怒れる群衆に向かって、議事堂に行って「死に物狂いで戦え」、「このままだと諸君の国が奪われるぞ」、「(弱腰の共和党議員に)この国を取り戻すのに必要な誇りと大胆さをくれてやれ」などと呼び掛けるのを見てきた。その暴徒たちが議事堂に乱入し、現職副大統領(当時)のマイク・ペンスや下院議長のナンシー・ペロシに死を宣告するのも。
それでも弁護団としては、法律解釈の問題として、被告人トランプの発言や行為は犯罪として定義される教唆・扇動には当たらないと主張できる。それ故、弁護団は「第45代大統領が合衆国に対する反乱なり謀反に加担したことを否定する」のだ。
また弁護側の主張によれば、トランプの発言は、いわば比喩的なものでしかない。つまり、「死に物狂いで戦え」も「このままだと諸君の国が奪われるぞ」も、あの日に議事堂で起きた騒ぎとは関係がなく、ただ「一般論として選挙の安全を守ることの重要性を強調しただけであり、そのことはスピーチの録音からも明らか」だと言う。裁判ではもっと緻密な論証が必要だろうが、まあトンデモ度も許容範囲だ。
トンデモ度6位「言論の自由の範囲内」
1月6日のトランプ発言は教唆・扇動に当たらず、従って言論の自由を保障した合衆国憲法修正第1条によって守られるという主張だ。
この点に関し、弁論趣意書は高尚なレトリックを駆使している。「アメリカの全ての国民と同様、第45代大統領(の発言)は合衆国憲法修正第1条によって守られている。実際、前大統領はアメリカが憲法や権利章典のような法的文書において、民意に反する言論も政府による報復から守られると特記している点で世界に例を見ない国だと信じ、そのように主張している。もしも修正第1条が、政府が現時点で民意に沿うと判断した言論のみを保護するものであるならば、それは何を保護することにもならないだろう」
どうやら弁護団としては、トランプは憲法で保障された範囲内の政治的発言をしているにすぎず、本気で政府の転覆を試みたわけではないと言いたいらしい。だが下院共和党で序列第3位のリズ・チェイニー議員も指摘しているように、この主張はナンセンスだ。
チェイニー議員は言う。「アメリカの大統領が暴徒を呼び集め、今回の議会攻撃をあおった。その後に起きた全てのことは大統領自身の責任だ。この大統領がいなければ何も起きなかった。直ちに強制的に介入して暴力を止めることもできたはずなのに、そうしなかった。合衆国大統領の就任の誓いが、これほど裏切られたことはかつてない」
トランプの言動があの暴動を引き起こしたことは明らかで、言論の自由とは関係ない。ミズーリ大学のボーマンも言うとおり「チェイニー議員は文句なしに正しく」、トランプは「モンスター」だ。